尾崎士郎、徳富蘇峰(馬込文士村、東京都大田区)
大正末から昭和初期を中心とした時期、多くの作家や芸術家達が居住したことから、後に馬込文士村と呼ばれた、大田区大森近辺を、散策しました。
幹線道路からすこし中へ入ると、坂の多い起伏のある台地に、昔は別荘地だったという姿が偲ばれ、そこはもう街の喧騒とは別の世界でした。この地域には今回訪ねた尾崎士郎や徳富蘇峰のほか、川端康成、石坂洋次郎、宇野千代、川端龍子、北原白秋、室生犀星、萩原朔太郎などなどが、住居を構えたとのことで、散策コースには、解説板なども整備されていました。
「人生劇場」で有名で、また、戦後横綱審議委員として、大相撲通としてよく知っている、尾崎士郎の記念館は、JR大森駅から歩いて10分ちょっと、閑静な住宅外の一角にありました。作家の部屋を庭からガラス越しに見られるようになっていて、人生劇場の掛け軸や、本人が使っていた机や火鉢、小物類などを眺めると、あたかも今にも写真の人物が、「やあ、いらっしゃい」と声をかけてくれるような感じになりました。
また、相撲通だったことから、大横綱双葉山との写真や、書斎前のケヤキ相手にまわし姿で鉄砲している姿などがあって、ユーモラスでした。山本周五郎も写っている友人仲間らとのまわし姿のショットもありました。年譜を見ると、25歳の時宇野千代と結婚し、31歳で別居、32歳で離婚し、同年古賀清子という女性と結婚していますね。昭和39年がんで逝去。享年66歳。
大正から昭和の戦前、戦中、戦後を通じて、言論界で活躍し、文化勲章も受章した徳富蘇峰の住居跡が、現在は大田区の蘇峰公園として残されており、蘇峰の収集した和漢書や時代をリードした当時の一流どころの文人や政治家などの書簡などが、展示されていました。森鴎外、与謝野晶子、吉田松陰、勝海舟、新島襄など時代を彩った人々の肉筆書簡など多数あり、興味深く見ました。
蘇峰はここを「山王草堂」と称して大正3年から昭和18年まで住んだそうですが、現在は区の公園となって広い敷地がそのまま残され、晩秋のやはらかな日差しの中で、静かに時を刻んでいました。
この大森界隈を歩くと、堂々とした邸宅が軒を連ねていますが、それでも昔の広大だった各屋敷はその後の相続などで細分化を重ねていて、今、昔のままの広さを残しているのは、この蘇峰公園と、石坂泰三邸跡の「東芝会館」くらいだけだと聞きました。
蘇峰公園のエントランスの秋のたたずまいと、しばらく歩いたところの室生犀星旧居を示す案内板です。そして、最後に、厳島神社というお宮さんの池の真ん中で、じっと日向ぼっこで動かずにいたカメのスナップを載せてみます。
大森駅を10時過ぎにスタートして、3時間弱の散策の記録でした。撮影日:2008,11,26.
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コメント
馬込文士村のような規模ではないのですが、近隣の東近江市五個荘町に江戸時代からの豪商の出である作家 外村繁の生家が保存公開されています。20世紀初頭の作家の生家というよりは近江商人の館という雰囲気が強いのですが。今回、外村繁の生涯が映画化されるとの話を耳に入れました。三浦友和主演のようです。彼の代表作「筏」を読み直そうと書架を探したのですが行方不明。新装本が出版されていましたので読んでみました。江戸末期の近江商人の蝦夷まで及んだ活躍ぶり、江戸と彦根、五個荘との往来と肩肘張らずに読み終えました。
投稿: すずか | 2008年12月 1日 (月) 21時57分
この記事に関係のないはなしですが、先日 NHK衛星第2で 日本ナンダコリャこれくしょん・今度は俳句だ!というのをやっていました。2時間番組でしたが面白くて引き込まれてしまいました。ナンダコリャ・・とついているだけあって へ~と思う俳句ばかり。門外漢でも楽しめました。見られましたか?
投稿: kawaranadesiko127 | 2008年12月 1日 (月) 23時46分
つい先日、新宿区にある「林芙美子記念館」を訪ねました。昭和26年にその生涯を閉じるまで住んでいた終焉の地。この地で代表作「うず潮」「晩菊」「浮雲」などが執筆されました。純和風のおおらかさを併せ持った落ち着きのある住居で、建材や建具、調度品にも独自の美意識が込められていて、そのこだわりは家のあちこちに見られます。
この記念館から少し行ったところに中井出世不動尊があり、毎月28日に御開帳。僧侶円空の作である不動尊が間近で拝顔できました。円空仏は岐阜や愛知には多数存在するのですが、東京ではここでしか見られないということです。新宿区の管理だそうですが、地域のお年寄りたちが温かいお茶をふるまって迎えて下さいました。
投稿: さがみの | 2008年12月 2日 (火) 01時04分
>豪商の出である作家 外村繁^^^
大学の講義で「近江商人」の活躍ぶりの研究を、たびたび受けたことを思い出します。教授の名前は忘れましたがーーーケインズや、ハロッドよりも親しみやすかったですね。
「豪商」ものではありませんが、「絹と明察(三島由紀夫)」「星と祭(井上靖)」「花の生涯(船橋聖一)」「父の肖像(辻井喬)」など近江を舞台にした印象深い小説が、ありました。
書き込みありがとうございました。
投稿: kij | 2008年12月 2日 (火) 21時36分
>これくしょん・今度は俳句だ!~~~
残念ながら、放送はみませんでした。
11月から12月にかけて亡くなった人^^
早稲田の夜急にしぐれぬ漱石忌 松根東洋城
(12月9日没 49歳)
かけちがふボタンどこまで憂国忌 増田史
(三島由紀夫11月26日没 45歳)
蕪村忌の落日見たり日本海 内山超楼
(陰暦12月25日没 68歳)
コーヒーはブラックにする寅彦忌 森武司
(12月31日没 57歳)
あとひとりモーツアルトも十二月 わたし
(12月5日没 35歳)
書き込みありがとうございました。
投稿: kij | 2008年12月 2日 (火) 21時52分
>新宿区にある「林芙美子記念館」を訪ねました.
記念館は「一の坂」から「八の坂」まである「中井の四の坂」脇にあり、私はあの近くに10年ちょっと住んでいたころ、毎日のwalkingコースでした。ところが、記念館は塀越しに垣間見るだけで、ついぞ中には入らずじまい。その後「放浪記」「浮雲」「めし」などを読み、また、森雅之・高峰秀子の映画、森光子の舞台など、林作品に触れる機会が何度かあり、あらためて、訪れたいと思っていました。近々、行ってきます。
書き込みありがとうございました。
投稿: kij | 2008年12月 2日 (火) 22時01分