2009年9月28日 (月)

横浜散歩③ 神奈川近代文学館

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  • かねて横浜の山手に神奈川近代文学館があり、そこには、夏目漱石関連の特徴的な展示があると聞いていたので、訪ねました。ただ実はこの朝、宿泊したすぐ近く横浜関内のホテルのスタッフに、「神奈川近代文学館は、どのあたりにあるの?」と尋ねたとき、すぐに答えが返ってこず、ネットで調べてもらうのに少し時間がかかりました。文学館というのは、その程度の地味な存在なのだろうと覚悟しながら、歩を進めました。

  • 山下公園から標識をたよりに、谷戸坂というなだらかな坂を上がって行くと、港の見える丘公園に出る。そこから、公園内を横切るような感じで歩いていると、橋の向こうに木立群に覆われた文学館の建物が見えてきた。

  • 神奈川ゆかりの文学作品を展示するというテーマに沿って、漱石の展示は、小説「門」の主人公野中宗助が市井の幸福な生活を送りながらも友Bunngakukann3 人を裏切った罪の意識に苦しみ門をたたいた鎌倉の円覚寺、同じく小説「こころ」の冒頭で、主人公の私が「先生」と出会う鎌倉の海水浴場をイメージして、初版本の装丁や、自筆原稿がならんでいました。

  • また、漱石が職業作家となってから50歳で亡くなるまでの10年間すごした東京早稲田『漱石山房』の書斎風景、「吾輩は猫である」のモデルとなった猫から三代目にあたる飼い猫を描いた絵「あかざと黒猫図」や最晩年の水墨画「秋景山水図」、さらには「文学論」の自筆原稿と赤インクでびっしりしたためられた生々しい推敲あとなども、見ものでした。

  • 漱石はいうまでもなく根っからの江戸っ子であり生活の拠点も、小説の舞台すなわち「三四郎」「それから」「道草」などの情景は、ほぼ大部分が東京なのに、なぜ遺品の数々が神奈川の文学館に保存されているのか、調べたことはありませんが、漱石とその時代を訪ねる、いい時間を過ごせました。………「明暗」の湯河原は神奈川でしたし、「彼岸過迄」にも鎌倉が登場した………。 

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  • 神奈川近代文学館は「神奈川の風光と文学」「神奈川と作家たち」がメインテーマであBunngakukann5 り、その企画のなかで展示されている作家たちは、キラ星のごとしといったところでした。

  • 夏目漱石から萩原朔太郎、芥川龍之介から中島敦、太宰治・三島由紀夫から現代まで………と、時代を追って、展示が続きましたが、谷崎潤一郎、川端康成、小林秀雄、開高健、そして私がある時期集中して読んだことがあり、今も本棚の奥に残している山本周五郎や立原正秋と、とりあげればきりのないくらいの展示でした。五木寛之、村上龍、島田雅彦など、現在活躍中の作家もいました。

  • 書き忘れました。森鷗外は横浜港からドイツに留学、帰国後、あとを追って来日したエリーゼ(「舞姫」のモデル)と横浜港で別れ、帰国させています。

  • 常設展の最後の方には若い時拾い読みした石原慎太郎のコーナーがあり、今でこそこわもての東京都知事さんですが、亡くなった裕次郎の映画写真も添えられて、懐かしく感じました。

  • 撮影日:2009年9月19日。

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2009年8月23日 (日)

エフゲーニ・オネーギン(プーシキン、チャイコフスキー)

  • 清里でフィールドバレエ「タチヤーナ」を見たのを機会に、その原作であるプーシキンの小説「オネBarehonn ーギン」(岩波文庫)を読み、チャイコフスキーのオペラ「エフゲーニ・オネーギン」のDVD(bs2の録画)をもういちど見直しました。

  • 物語をふりかえると、19世紀のロシア。内気で繊細な少女タチヤーナは、ペテルブルグの青年貴族オネーギンの都会的で虚無的な雰囲気に一目で惹かれてしまう。彼女はオネーギンに一通の手紙を書くが、その返事は意に反して理屈っぽく冷ややか。時は過ぎ、外国の放浪生活を終え首都に帰って来たオネーギンは、舞踏会で美しく変身したタチヤーナと再会する。すでに結婚していた身のタチヤーナ。今度はオネーギンが彼女宛に手紙を書き愛を訴えるのだが、時すでに遅く、彼の愛が受け入れられることはなかった………

  • まず原作のプーシキンの小説、もちろん日本語訳Bareopera4_2 だけれど、『韻文小説』といわれる流れるような文章で、当時のロシアの片田舎の風景、 後半ではモスクワ、ペテルブルグといった重厚ではなやかな社交界とそこでの人間模様が描き出されていました。

  • 『………あなたは前から私の夢に現れておいででした。姿こそ見えね、私はあなたをいとおしく存じておりました。秀でたあなたの目差が私を悩ませ、あなたのお声が胸いっぱいに響き渡っておりました、とうの昔から。………いいえ、それは夢ではありません! あなたがお見えになったその瞬間に、私ははっと気がつき、体じゅうがしびれて燃えはじめ、心の中で「ああ、あの方だ!」と叫びました………』。タチヤーナがオネーギンに夜を徹して綴った手紙の一節ですが、実になまなましく、かつ、なまめかしい。さすがロシア文学史上にそそり立つ文豪プーシキンといったところ。

  • 次いでDVDだけれどオペラの展開。東京のオペラの森公演(2008年4月)、小沢征爾指揮のチャイコフスキーに乗って、透けるように美しいタチヤーナ(イリーナ・マタエワ、田舎娘というよりすっきりした都会的な印象、原作と比べれば少女というよりずっとおとな。ソプラノ)が、眠れない夜に輾転反側、呻吟しながら手紙をしたためるアリアが歌いあげられる。美しい人、演技もひたむき、ちょっと一本調子だけれど、原作の深みを思い出しながら聴いていくと、歌手が表現しようとする少女(………画面は水も滴るロシア美人だが)のひたむきな切ない心情が伝わってきました。

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  • 舞台は進みオネーギン(ダリボール・イェニス、髪ふさふさのロン毛。バリトン)がタチヤーナに分別くさい返事の説教をする場面、時を経て主客入れ替わり、社交界の貴婦人となったタチヤーナがオネーギンを振り切る場面などが繰り広げられますが、いずれも、プーシキンの原作(翻訳だけれど)を照らし合わせると、より興味深く感じられました。画面では少女と青年貴族というよりも、熟れきった女性と気の多い悩める中年管理職という感?がしないでもなかった。そこは、そのような後ろ向きの見方は抑え込んで、小沢征爾のチャイコフスキーに浸った方が実りも多いと思いました。

  • オペラは主役二人のほかに、オネーギンの親友レンスキーとタチヤーナの妹オリガの愛の交歓、オネーギンとレンスキーの決闘など見せ場が続く。ただタチヤーナの妹オリガ(エレーナ・カッシアン)の堂々たる体格で陽気なのはわかったが、レンスキー(マリウス・ブレンチウ)が禿頭だったのは、夢多くオリガへの愛を歌い上げる青年詩人という感じからは程遠くて、まあ、あきらめるしかありませんでした。

  • ややとりとめがありませんが、原作~オペラ~清里でのフィールドバレエと、ロシアの世界、そしてプーシキン、チャイコフスキーに一通り触れられたことは、この夏のいい記憶でした。

  • Photo最後にプーシキンの銅像。一昨年サンクトペテルブルグを旅行した際、エカテリーナ宮殿隣接の学習院裏手で撮ったもの。この時はまだ、プーシキンの名前だけしか知らず、パチパチと収めていただけだったが、今回を機にblogに掲載出来、『我がプーシキン』として身近になったことを報告しておきます。

  • ついでにもうひとつ。「オネーギン」では、前述のように主人公オネーギンと親友レンスキーとの決闘場面があるが、原作者は後に、妻に執拗に言い寄るフランス人近衛士官に決闘を挑み、決闘で受けた傷がもとで、その2日後に息を引き取るという、超激しい37歳の生涯の終わり方!!、恐れ入りました。

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2009年8月17日 (月)

清里フィールドバレエ「タチヤーナ」:清里③

  • Breeposta ことしが20回記念公演という「清里フィールドバレエ」を鑑賞した。清里高原萌木の村特設野外劇場で、2009年8月7日、夜8時からだった。

  • 四国九州地方に大雨を降らせていた台風の影響で、清里のこの日は朝から雨模様、夕方になっても激しい雨。前売りチケットがフイになるかと半ばあきらめていたが、ともかく会場に行ってみたら、もやもやながら直前に雨が止み公演開始、2時間後の終了時には、動きの激しい雲間に満月が見え隠れするという幸運に恵まれた。人間、あきらめてはいけない。雨のあがるのを待つ主催者の粘りには感心させられた。

  • 演目はチャイコフスキーのオペラ「エフゲーニ・オネーギン」を、当日のバレエ団である『バレエシャンブルウエスト』が、オペラのヒロイン‘タチヤーナ‘に光をあてバレエ化したもの。チャイコフスキーのバレエと云えば、ポスターにもあるとおり「白鳥の湖」「くるみ割り人形」がメジャーなのだが、この‘タチヤーナ‘は、文化庁芸術祭で大賞を受賞、本場サンクトペテルブルグ、モスクワなどの公演でも好評だったという。

  • 高原の夜、森の木立や雨をいっぱい吸い込んだ緑を背景に、舞台だけが明るく浮かび上がってバレエがはじまり、ダンサーの流れるような躍動が素晴らしかった。オーケストラ付きの音楽となっていないのは欲張りすぎというところだが、チャイコフスキーのメロディが随所に奏でられ、19世紀のロシアの片田舎の少女タチヤーナの恋、それを袖にした青年貴族オネーギン、オネーギンと親友レンスキーの決闘…………、ほぼオペラの展開に忠実に演じられていった。

  • 年が経ちペテルブルグの社交界の貴婦人となったタチヤーナに、放浪生活をしていたオネーギンが、今度は逆に胸の内を打ち明ける。タチヤーナの心は揺れるが、失った過去に戻ることはなく、オネーギンに別れを告げる…………

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  • チャイコフスキーのオペラ「エフゲーニ・オネーギン」は、2008年4月に東京オペラの森公演で、小沢征爾指揮で演じられていて、そのDVD(bs2録画)を見たことがある。さらに、清里から帰った後、原作であるプーシキンの「オネーギン」を、岩波文庫で読んでみた。それらをふりかえって、バレエが表現しようとした内容の理解が深まり、あらためて清里高原の夜の幽玄な舞台を思い出し、夏のひと時、あざやかな記憶が刻めた。

  • ひとつ、失敗だったのはオペラグラスを持参するのを忘れた結果、ダンサー達の表情や、ダンスの展開にともなう筋肉の動き、足首や指先の微妙な表情などを、うかがうことができなかったこと。

  • なお、東京オペラの森公演と岩波文庫の感想については、次回、日を改めて紹介させていただきます。

  • 写真は、公演終了後のカーテンコール。この時間に限って撮影OKとなり、ダンサー達がポーズもしてくれたが、わがコンパクトカメラでは、速い動きについていけなかった。残念。

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2009年7月22日 (水)

西教寺(大津市坂本町)と明智光秀

  • Saikyouji3_2 比叡山ドライブウエイから、坂本に下りたところで、西教寺の門前に通りかかり、立ち寄ることにした。40年ほど前に訪ねたことがあるような、ないような、自分の中で存在の不確かな記憶を、あらためてたどりつつ、一歩一歩、石畳の参道を上って行った。

  • 総門をくぐって参道に出ると、両側に、寺院(子院)が続き、中にはかなり大きなお堂もあり、どこが本堂なのかわからない。そのうちのこれが本堂かな?と思って上がり込んだところで、はじめて僧侶が何か作業をしておられたので、「本堂はどちらですか」と、間の抜けた問いかけをして、「もっと上の方ですよ」と軽くいなされる始末。

  • 調べてみると、西教寺は、天台宗総本山の延暦寺や、天台寺門宗総本山の三井寺に比べ知名度は高いとは言えないが、天台系仏教の一派である天台真盛宗の総本山として、400か寺以上の末寺を有するという。わたしはここに明智光秀の供養塔があることは知っていたが、まさか、総本山との認識はなかったので、その境内の威容に、はじめて納得した。

  • Saikyouji1 ようやく本堂にたどり着いた。広い敷地を圧するがごとく、堂々たる建物が目に入った。総欅入母屋造。江戸時代 元文4年(1739)に上棟落成。用材は紀州徳川家からの寄進されたとのこと。

  • 人の気配のないお堂の中から間を置きながらのカーン、カーンという鉦の音がする。恐れながらと、正面の障子の扉を開けて、中にはいった。鉦の音の合間に、尼僧と思われる女性の低い読経の声が、ゆっくりつぶやくかのように耳に入ってくる。

  • ご本尊の、重要文化財の丈六の阿弥陀如来(平安時代・定朝様式)さまに、お手をあわそうと、一歩二歩前に進んだ。と、いきなり読経の声が止み、「入ってはいけませーん」という鋭い声!……。はっとして、きょろきょろ遠く右手の方をみると、ご本尊に向って座っている尼僧らしき姿が目に入った。どうやら、気がつかない間に一線を超えた(超えそう?)らしい。あわててその場で合掌して、本堂をあとにした……。

  • 外に出ると、また何事もなかったように、鉦の音と低い読経の声が、静かに聞こえるだけだった。後述するが、私は、「不断念仏」を唱える尼僧の行を、妨げたらしい。

  • 本堂を出てすぐ立派な鐘楼が目に入った。この鐘楼は、明智光秀との因縁がSaikyouji2 あるようだ。すなわち元亀2年(1571)の織田信長の比叡山焼き討ちの際、当寺も災禍を被り、その直後に築かれた坂本城の城主となったのが明智光秀。光秀は西教寺の檀徒となり、復興に力を注いだという。総門は坂本城城門を移築したもので、そして、鐘楼堂の鐘は陣鐘だとのこと。天正10年(1582年)に54歳でこの世を去った光秀はその6年前に亡くなった内室熙子や一族の墓とともにここ西教寺に祠られている。

  • 前後するが、総門をくぐってすぐ左に『文学ゆかりの地』という立看板があった。三浦綾子の小説「細川ガラシャ夫人」の一節から「鉦の音」と題する一文だった。以下全文を写し取ってみたい。Saikyouji4_2

  • 西教寺はもう目の前にあった。しんと静まったあたりの空気に、本堂の方から鉦を叩く音が聞こえてくる。その音が、一層静けさを深めている……、カーン、カーンと間をおいてひびいてくる。静かだ。いかにも静かである。やがて、光秀がいった。……「人間、この音色のように澄みたいものじゃが……」

  • 「お父上様は、澄んでおられます。」玉子はまじめな顔でいった。「ほう、お玉の目には、父が澄んでうつるか?」「澄んでおりませぬか」……老僧はふり返りもしない。無心にただ鉦を鳴らしつづけている。なるほど(不断念仏)じゃ……
  • ここに来て、光秀はいつもふしぎな気持ちになる。自分たちが、血なまぐさい戦場を駆けめぐっている時も、広いこの本堂でに黙然と坐って、この老僧は、念仏をつづけていたのかと思う。恐らくこの僧の一生は、南無阿弥陀仏の六字を称え、鉦を鳴らすことだけで終わるのであろう。その老僧の心はわからない。が、尊いことに光秀は思う。

  • 戦争、強奪、疫病、災害などの絶えぬ世に、こんな一生を終る僧がいることは、言いようもなく尊いことに思われるのだ。

  • 「あー、これは、これは、御領主さま。」「御来山を存じませず、まことに失礼いたしました。」「いや、用があればわしが出向く。わしは、この不断の鉦がすきなのじゃ。」

  • 坂本城に移ると同時に、光秀はこの西教寺の復興に力を貸した。信長が比叡山を焼く時も、光秀は全山のために慎重な配慮をした………。

  • 小説「細川ガラシャ夫人」は女流作家三浦綾子先生が昭和四十八年一月から二年五ケ月に亘って執筆。初めての歴史小説。この小説の中に「鉦の音」「?」の中に光秀が坂本城主になってから、西教寺の不断念仏の鉦の鳴る本堂へ、妻煕子、末娘玉子(細川ガラシャ夫人)、左馬助光春(家臣)、郎党を連れての参詣の様子が描かれている………。

  • <注>お玉(玉子)とは、光秀の3女で、後の細川忠興の正室。俄羅奢。キリスト信徒(キリシタン)として有名。

  • 少し長くなったけれど、立看板(文学碑)をあらためて読み、作家の表現の巧みさに、感じ入るとともに、あの時、本堂で聞いた尼僧の読経の声と、鉦の音が再び蘇ってきた。

  • 撮影:2009年5月11日。

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2009年6月27日 (土)

軽井沢、浅間山:更科紀行⑥完

  • Karuizawa2 Karuizawa1                                              

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  • 「更科紀行」を訪ねるバスツアーの最後の記事は軽井沢。芭蕉は信州更科の月を見て8月20日ごろ江戸に帰っているが、姥捨から小諸を通り、軽井沢を経て、碓氷峠を越えるルートだったと思われる。

  • 今度のバスツアー1泊2日の第一日目が、立川を出発して木Karuizawa3_2 曾奈良井宿と長野善光寺。その善光寺では7年に一度の御開帳に巡り合わせ、その夜、善光寺の奥座敷と云われる上山田温泉に泊った。源泉豊かな上山田温泉で鋭気を養った2日目は、朝一番に姥捨と棚田を旅館の若社長の案内で訪ね、芭蕉の更科紀行の足取りをたどった。次いで小諸懐古園と高浜虚子記念館で、島崎藤村や高浜虚子の文学散歩、そして、いよいよここ軽井沢をバスツアーの最終の降車スポットとした。

  • 軽井沢に特別の芭蕉の記録があるわけでなく、ここでは約1時間の自由時間をとった。5月末の小雨まじりでやや肌寒かったが、私は、結婚式で2,3度立ち会ったことのある軽井沢聖パウロカトリック教会まで足を伸ばした。教会の前には、ちょうどその結婚式に参列しようという若い人たちの姿が、どの顔も笑顔、それぞれ軽快に着飾って、お祝いのはなやかな空気がいっぱいだった………。

  • 引き返してミカドコーヒーに立ち寄り、ここまでの旅行幹事の役割が、どうやら無事終われそうだと、ひとまず安堵の時間を過ごした。

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   吹きとばす石ハあさまの野分哉

  • 「更科紀行」で芭蕉が小諸から軽井沢あたりの浅間山のふもとを通る時に、その風景を詠んだものだが、この句形に落ち着くまでに、何度も作り直しをしていることを、その後の勉強会で知った。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 句意:浅間山に吹き荒れる野分が、山肌の石を烈しく吹き飛ばす。その石まじりの野分のものすごさが、いかにも浅間山にふさわしい。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 最初は「秋風や石吹きおろす浅間山」、次に「吹きおろすあさまは石の野分哉」と作り直し、吹きおろすのところを「吹き落すあさまは石の野分哉」と直し、さらに「吹き落す石はあさまの野分哉」と直し、それでも物足らなくて「吹きとばす石ハあさまの野分哉」と決めたと云われる。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 漠然と浅間山が浮かんでいる最初の句が、次第に、活火山である浅間山の荒涼とした浅間山の野分風景は、普通の野分が『草木をなびかせて吹き荒れる』のに対し、最終句では『石を吹きとばす野分である』と詠んだところが、さすが芭蕉……

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 句評:推敲課程で「あさまは石の野分」という形であったことでも明らかなように、一句の眼目は「石の野分」という珍しい趣向にある。すなわち普通の野分は草木を分けて吹きすさぶものであるが、ここ浅間山の野分は石を吹き飛ばして荒れ狂うというのである。またその風の浅ましさ(驚きあきれるさま)を倒装法を用いて、山の名に言い掛けて表現したのがもう一つの自慢。堀信夫「松尾芭蕉全発句」(句意、句評は芭蕉を読む会山崎章次先生講義録による)。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 芭蕉の「更科紀行」は、この「吹きとばす……」の句で終わっている。我々の全6回の記事もこれでおしまいです。お読みいただきありがとうございました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 撮影日:2009年5月30日。3枚目は2004年8月。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                | | コメント (1) | トラックバック (0)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                2009年6月24日 (水)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                小諸高浜虚子記念館:更科紀行⑤

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 俳人高浜虚子は太平洋戦争の戦火を避けて、昭和19年9月から22年10月まで、Kyosi4 小諸市に疎開したが、その記念館があり、当時虚子が実際に住んでいた「虚子庵」とともに公開されていた。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • これまで私の中の高浜虚子は、漱石の「吾輩は猫である」を俳誌「ホトトギス」に登場させた才人、正岡子規と同じ松山出身で、子規から学問の後継者にと切望されながらそれをきっぱり断った男、そして、今日TVなどでよく見かける孫の稲畑汀子のおじいさんという風に、主役ではなく、主役の引き立て役としての存在だった。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • ふしぎなもので、「虚子庵」に上がり込み、また、記念館に展示されている虚子の代表Kyosi3 句十二句を認めた直筆の「六曲一双」の屏風を目の前にして、私は瞬く間に、虚子という人が、現代俳句界に大きな影響力を残す存在であったという「まぎれもない主人公」である事を、強く認識させられた。まさに、ほんものの迫力なのだろう。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • なかでも記念館のメイン展示物である六曲一双の直筆屏風は、虚子の一句一句にあふれる大きな作風に、作者自身の性根の入った力強い筆使いが感じられて、圧倒された。ここで、正確に12ケ月に配された屏風の12句を読み上げる気持ちで、いくつかを思い出してみる。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                     山寺の宝物見るや花の雨

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                    神にませばまことうるはし那智の滝

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                    遠山に日の当りたる枯野哉

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                    大空に伸び傾ける冬木哉

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Kyosi1_2

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  ☁☂☁☂☀ ☁☂☁☁☀   ☁☂☁☂☀ ☁☂☁☁☀

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • Kyosi2 「虚子庵」の入口に句碑があった。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   人々にさらに紫苑に名残あり

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 虚子が終戦後昭和22年10月に、小諸を去るにあたって、世話になった人々に感謝の気持ちをこめて歌ったものだろう。碑のまわりには紫苑の青い葉がいくつか顔を出していた。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 撮影日:2009年5月30日。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                    

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                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                小諸「懐古園」、島崎藤村:更科紀行④

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • Kaiko4 芭蕉の「更科紀行」を訪ねる途上で、小諸「懐古園」に立ち寄った。木曾義仲の武将小室太郎光兼なる人物が最初に館を築いたという、遠く鎌倉・平安の時代までさかのぼる古城である。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • エントランスにあたる三の門は1615年に創建、その後大洪水での1765年再建のものがいまに残っているとのことで、よく見ると両の塀には、矢峡間や鉄砲峡間がある、戦闘的な建物だ。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 浅間山のふもとに位置する小諸、この日は、さわやかな5月の高原の風が古城の新緑を柔らかに揺らしていた。下左黒門橋、下右天守台石積と馬場。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Kaiko10 Kaikoyk1                       

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                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Kaiko9 Kaikoyk3                                 

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 

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                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • もう一つは「惜別の歌」の歌碑。『遠き別れに耐えかねて この高楼に登るかな 悲しむなかれわが友よ 旅の心をととのえよ…………』。一緒に旅をしたわが古典講座のY先生が、この碑の前で小林旭顔負けの独唱をされ、緑の薫風の中で、それに一同が自然と唱和する、思い出深い懐古園見学となった。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Kaiko6 Kaiko7                                              

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 ☁☂☁☂☀ ☁☂☁☁☀   ☁☂☁☂☀ ☁☂☁☁☀

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                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 撮影日:2009年5月30日

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Kaiko5 Kaiko11

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                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                姥捨、田毎の月: 更科紀行③

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Ubasute2 Ubasute6                                   

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  ☁☂☁☂☀ ☁☂☁☁☀

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 芭蕉が「更科紀行」の旅をした貞享5年(1688年、45歳)の春から夏は、「笈の小文」の最後の訪門地須磨・明石のあと、京都、大津、岐阜、名古屋各地で、多くの門人たちの歓待を受けたり、新しい門人の入門があったりと、すっかり有名人となり、世間からもてはやされた時期であったといわれる。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • しかし、こうした日々は、脱社会、脱体制を志した芭蕉にとっては、いったん飛び出した世俗的秩序にまた組み込まれることになり本意ではなかったはず。これではいけないと、門人のいないわびしい山中の旅をひそかに考え、岐阜から木曾路を通り、信州更科に行って、名月をみようと反省・構想されたのが、「更科紀行」の旅であった(井本農一、芭蕉入門)。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • われわれのツアーも、その更科姥捨がハイライトだ。まずは、朝、上山田温泉の旅館を早々と立って、JR姥捨駅に上った。入場記録に08時13分と云うのがその証明。眼下に「田毎の月」を映す棚田、姥捨伝説の冠着山、はるか前方の川中島、そして善光寺平の中央に長野市街などが展望された。写真をクリックして拡大してみてください。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Ubasute4 

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Ubasute3_4

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  ☁☂☁☂☀ ☁☂☁☁☀

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • この日のガイドは前夜泊まった旅館の若社長。我々のために芭蕉の更科での足跡にはじまり、地元の姥捨伝説、川中島合戦絵巻に至るまで、少し降りだした雨をものともせず熱弁をふるってくれた。この日は、たまたま「棚田のオーナー」による田植エベントで、この日のために都会から田植にきたオーナーたちも、われわれのガイドを遠巻きにして、聴いていた。写真は左がその様子、右が、観月の名勝、長楽寺の「芭蕉翁面影塚」と観月台をバックにした、わが一行のすました様子で、最前列サングラスが筆者(v^ー゚)。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                       俤(おもかげ)や姥ひとりなく月の友  芭蕉

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 句意:姥捨山に月を見ていると、捨てられてひとりで泣いている老婆の面影がうかんでくる。その面影を今宵の友として月をながめよう。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 句評:この句は直接謡曲(世阿弥の『姥捨』)を踏まえたもので、曲中の老女が白衣の袂を翻して、月下に舞う幻想的イメージを俤にしているところがすばらしい。この句は月天心に至る夜更けの姥捨山の旅情を詠んだ句と芭蕉自らが自注している。宵の間は名所の月見に浮かれた観光客でひとしきりにぎわった姥捨山も、月天心に至る深夜には一人として残るものもなく、芭蕉ひとりが、山中に捨てられたという姥の俤をしのびながら、そこに立ち尽くしていたというのである。たしかに、芭蕉のいう通り、姥捨山の本意は、深夜の月の光をただひとりで詠めるところにある(堀信雄、『松尾芭蕉集 全発句』)。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                    元日は田毎の日こそこひしけれ  芭蕉

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • この旅の翌年、芭蕉は知人あての書簡で「去秋は越人といふしれものと木曾路を伴ひ、桟のあやうきいのち、姥捨のなぐさみがたき折、きぬた・引き板の音、しし(鹿)を追ふ声、あはれも見つくして、御事のみ思ひ出候。としは明ても猶旅の心ちやまず」とし、この句を提出している。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 句意:前年の秋、中秋の名月を信州更科に賞し、その折「田毎の月」を眺めたが、新しい年の元日を迎え、「田毎の月」ならぬ、初日の映る「田毎の日」はどんなであろうかと、更科が恋い慕われることだ。「更科紀行」の旅の翌年の歳旦吟で、月の名所である「田毎の月」を「田毎の日」と換骨奪胎したところに俳諧性がある。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  ☁☂☁☂☀ ☁☂☁☁☀

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                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 撮影日:2009年5月30日。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 関連記事:同じ仲間で、昨年芭蕉の「鹿島詣」を訪ねている。下記をどうぞ。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   芭蕉:「鹿島詣で」へ 2008年5月22日

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   鹿島神宮 2008年6月2日

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   根本寺 2008年6月4日

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                | | コメント (0) | トラックバック (0)

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                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                木曾奈良井宿: 更科紀行②

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • Sarasinamap_2 芭蕉の「更科紀行」を訪ねるバス1泊旅行の記録、第2回は木曾路奈良井宿。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 1日目朝早く、立川を出発して中央道八王子IC→長野道塩尻1Cで降り、中山道木曾11宿のうち、西から数えて5番目の奈良井宿に着いたのは、お昼前11時頃。笹子トンエルまで強く降っていた雨が、甲信にはいると、ほとんど小止みになっていた。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 「更科紀行」で芭蕉が経過した地点は、桟(かけはし)・寝覚・猿がばば・たち峠が記されているだけで、奈良井宿が特別記録されているわけではない。が、木曾路の嶮難を歩いた往時の芭蕉を追体験する主旨で、難所鳥居峠の麓にあって、江戸時代には「奈良井千軒」と云われるまでに栄えたこの宿場を訪ねた。ここは、有名な妻籠宿とともに国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Narai4 Narai5                                              

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                ~~~~~ ~~~~~

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                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Narai1 Narai3                                              

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                ~~~~~ ~~~~~

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 街並みは、よく保存されていた。我々のようなその日だけの訪問者にとっては、大変ありがたいのだが、実際この地に住まう人々が、電気・ガス・水道・IT・冷房暖房など、不便をしのいで保存するのは、並大抵ではなかろうと推察する。人通りもほとんどなく、道端で立ち話をするお年寄りの顔も見かけない街が、どうして、今日を生き延びているのか、いささか心配になった時間だった。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                    桟(かけはし)やいのちもからむつたかづら  芭蕉

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 句意;まことに恐ろしげな木曾路の難所として聞こえた桟橋だ。蜀の桟道さながら足もとすくむ千尋の断崖に桟道がかかっている。見ればその桟に燃えるように美しい蔦紅葉が命限りとからみついてゐる。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 句評:堀信夫「松尾芭蕉全発句」……一句は和歌や連歌に難所として名高い木曾の桟を俤にして、それに深山幽谷らしい当季の蔦かづらをあしらったもの。現実の景(決して危険ではない)に拠ったものではない、「いのちをからむ」という言葉を導き出したところに作者の手柄がある。「いのちをからむ」とは直接的に「蔦が美しくも危ういその命を、かろうじて桟道にすがって保っている」さま。その情景にそこを渡る人間の気持ちに託し「人界なおしかり」と観相の意味を含ませているのである。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Naraimap Naraimap2                                             

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 ~~~~~ ~~~~~

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                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                | | コメント (0) | トラックバック (1)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                2009年6月 1日 (月)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                善光寺御開帳:更科紀行 ①

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • Zennkoji27年に一度の長野善光寺御開帳は、きのう5月31日で幕を閉じたが、その直前に、訪ねる機会があった。2009年5月29日。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 松尾芭蕉の「奥の細道」の講読会に参加して6年目になる。芭蕉は「奥の細道」の旅に出る前年、.須磨明石の旅のあと、京都・大津・名古屋を経て、貞享5年8月に岐阜から、木曾路をたどり、更科姥捨山の月を賞し、善光寺に詣で、長野から碓氷峠を越えて、8月末に江戸に帰っている。今回はその「更科紀行」をたどる1泊2日のバス旅行で、御開帳に巡りあわせた。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 境内は賑わっていた。報道によると今年の御開帳は、57日間の期間中、前回(2003Zennkoji1_2 年)より7%多い過去最高の673万人が参拝したという。高速道割引が効いたらしい。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 写真は前立本尊と綱で結ばれた回向柱への行列で、触れるまでには、たぶん1時間くらいはがまんが必要な長い列で、たどり着いた人たちの感激の様子が伝わってくる。下左の写真は本堂側から撮ったもので、長い行列と回向柱、そこから前立本尊につながる綱の様子が見ていただけると思う。ところで、「あなたはも並んだのですか?」……回向柱は行列の人たちに託し、本堂の外陣から、時間をかけてお詣りさせてもらった。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 御開帳は1991年、長野勤務時代に体験した。当時朝の散歩で、ちょうどお朝事に出向かれる安寿さんにお会いする機会を得て、お数珠でお清めをしていただいた記憶が、いまでも鮮明だ。お参りしたら誰でも皆極楽往生できるという善光寺、2度目の御開帳でそれが確かなものとなった。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Zennkoji3 Zennkoji4                                              

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                ~~~~~~ ~~~~~~

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                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 芭蕉が更科紀行で残した善光寺の句。四門は善光寺・無量寺・雲上寺・浄土寺のいわゆる善光寺四門、四宗は天台・真言・禅・律の四宗をさす。句意は『善光寺は俗に善光寺四門とか、四宗兼学とか云われているが、このように全山ひとしく清らかな月光に照らされているさまを拝すると、帰するところはただ一つ、真如(あるがまま)の月のみであるとおもわれる』である。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • この句について、加藤楸邨は『仏教には諸々の教えが分かれて存在していても、その底に、結局はこの澄んだ月のようにただ一つの真実があるだけだということを言っているのであろう』と解説している。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 最後に、私の報告をもうひとつ。つれあいから「善光寺に行ったら、八幡屋礒五郎と玉だれ杏をぜひに……!」と云われていたので、永年の不実の償いと、あわただしい滞在時間、しかも観光客で混雑するそれぞれの店で、なんとか買い求めて、その夜の宿の上山田温泉に向かった。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 撮影;2009年5月29日。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Zennkoji6 Zennkoji5

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                | | コメント (1) | トラックバック (1)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                2009年3月18日 (水)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                「その時 歴史が動いた」 松平定知アナウンサー講演会

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • Matudairaposuta 普段のWalkingコースから、いつも眺めている立派な建物の宗教法人が、地域開放エベントとして、松平定知元NHKアナウンサーの講演会を開催すると聞いて、出かけました(2009年3月7日)。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • NHKテレビの「その時 歴史が動いた」は、9年間にも及ぶ長寿番組でしたが、この3月で、長い歴史を閉じるとのこと。同じNHKで、われわれにも記憶のある「歴史への招待」という、かの鈴木健二アナウンサーの番組が、6年間だったということで、それを、大きく上回る支持を得たと、松平さんは感慨深げに紹介されていました。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • その時々、この番組を見ていて、印象に残るものも多いだけに、松平さんには「おつかれさまでした」と、声をかけたいと思います。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 「現場主義:歴史の現場に立って、物事をみる」「専門家主義:ゲストに有名タレントを招くのではなく、その事柄に対して、実際に研究している人を招く」「実証主義:憶測で物語を作るのでなく、明確な証拠に基づいた歴史解説にする」を、3つのモットーにして、9年間番組を作ってきた、ことが講演の主題でした。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 番組は、あと2回だけとの話だったので、先週の「歴史とテレビ~時代を映した決定的瞬間~」を見ました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Matudaira2 Matudaira3                        

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                •  テレビの節目になった番組の回顧があったが、「皇太子(現天皇)ご結婚パレード」、「アポロの月面着陸」、そして、「9.11」などその時釘付けになった場面が、次々と出てきていました。Matudaira4 それぞれの瞬間、自分がどこで、誰と一緒に(あるいは、どういう仲間と)、その画面を見ていたのか、記憶をたどっておりました。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 今夜(3/18)の最終回スペシャルは、これまで放映の総集編。私には「信長」「秀吉」「篤姫」、さらに古くは「継体天皇」~~「三国志」~~「マッカーサー」「ボクシングの白井義男」と、いろいろ記憶にあるけれど、どんな構成になるか、楽しみです。   

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Matudairahall_2 ~~~

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                会場の『応現院』、外観は普段遠くから眺めていたが、近くで見たのは初めて。すごいの一語に尽きる建物で、一歩中に入るとその広さ、完備されたエスカレーター、立派な内装、あちこちに飾られている彫刻・絵画(仏像・仏画)などなど、最近完成したばかりということもあってか、目を瞠りました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                この日は、地域開放エベントだったが、信徒さんらしい方々が多く、ほぼ満員の会場は、みなさん整然として、松平さんの名調子に聴きいっていました。                                      

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                | | コメント (0) | トラックバック (0)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                2009年1月12日 (月)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                「半日」(森鷗外)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Hanniti  森鷗外に「半日」という短編があります。明治42年の作品で、大学教授とその妻の日常を書いたもので、ある日の朝から昼ごろまでの家庭が舞台です。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 この短編に出てくる「奥さん」は、同居している姑をお母さんとは呼ばずに「あの人」としか言わない、姑と同じ食事の席につかない、姑が管理している家計を取り仕切りたいが、自分には節約とか金銭管理はほとんどできない、それでいて、本人に特別の趣味があるわけでなく、気晴らしにお稽古に行きたいと云っても、狙いは稽古事そのものではなく、化粧をし装って、車(人力車)をかって、往き来するその時間だけが、楽しみという、いささか、困った存在。実家は、紀尾井町の非職勅任判事の父がいるというから、今で云えば最高裁に関係のある家柄です。「あなたが亡くなりでもしたら、わたしと玉ちゃん(ふたりの娘)とはどうなるんです(遺言はしっかり書いてあるんでしょうね)?」などとも言います。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 私は、ラジオの人生相談、たとえばTBSの「大沢悠里ののんびりワイド」で毎日朝9:20からの相談をよく聴きますが、ここでも、よく似た話が出てきますね。鷗外のこのような「奥さん」が特別めずらしい存在だとは、思われません。今日でも、あちこちにある話では??

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Ougai_2  解説(ちくま文庫、鷗外全集Ⅰ)には~~(鷗外が)再婚して7年の後、明治42年3月に書かれた「半日」は、よく知られているように夫人の忌憚にふれ、全集への採録を拒まれて、永らく日の目を見なかった。もしも夫人がここに描かれたような異常性格者でないとすれば、無理もない、と思われる苛酷な内容で、問題はこの小説を発表した鷗外の屈折の方にあるのではないだろうか。多分その裏には、表面に書かれた以上の破局的状態が伏在しており、彼は何とかしてこれを打開しようとしたのであろう~~

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 小説家とその妻の物語としては、漱石の「道草」を思い出します。これについて、江藤淳が「決定版 夏目漱石」(新潮文庫)の中で、次のような事を書いています。少し長くなりますが、引用します。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                ~~鷗外の「半日」と漱石の「道草」は、いずれも家庭生活を扱った私小説的な作品ですが、ここには二人の作家の具体的な他人に対する態度がよくあらわれています。(中略)鴎外夫人志げと漱石夫人鏡子が悪妻だったかどうか、見方によっていろいろいえるでしょうが、この二人の夫人がヒステリー症気味だったことは客観的に証明できるでしょう。そういう細君に対する漱石と鴎外の態度のちがいに、二人の人間観というか、人間に対する要求のちがいがはっきり見てとれる。それはおそらく二人の作家の心の奥底にあるなにものかを、うかがわせてもいるのです。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 「半日」の主人公はもちろん鷗外の分身ですが、細君に対して非常に細心に、低姿勢に対しています。細君の機嫌jをとるためには宮中の儀式を欠席してまでデリケートな神経をはたらかせています。優しいといえば実に優しいのだけれども、それでいてどこかヒヤリとした冷たさが底にかくされている。相手の心の底まで計算して先回りしてヒステリーを抑えていこうとする。ものごとを爆発させないでうまくまとめようとするのです。しかしそSoseki_2 うしている主人公は実に冷静そのもので、冷たい打算家のように見えます。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                この冷たさの裏側にあるのは、どうしても人間同士の魂と魂が裸のままに触れ合うことはない、そういうことは人間同士にはあり得ない、というあきらめでしょう。だからこそものごとはまるくおさめていかなければならない。彼にとって重要なことは、家庭という「形式」を維持すること、そしてこの「形式」に姑と嫁のあいだの秩序をあたえることです。こういう公的な役割を果すことのほうが、主人公には魂と魂が触れ合えないことより大事なのです。彼があきらめられるのは、彼の寂しさがあきらめられる程度のものだからともいえる。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 しかし漱石の「道草」や「行人」の主人公は、逆に爆発させまいと思っていても自分のほう から爆発させてしまう。しかも非常に陽性に爆発させてしまう。陽性といってもおもしろおかしいわけではない。漱石は主人公をいつも寂しい人間に描いています。その寂しい人間が悲痛な叫びをあげて怒りを爆発させる。「行人」にはそういう主人公が細君に暴力をふるい、そうすることによって一層みじめに、孤独になって行く。漱石も鷗外と同じように、深いさみしさをかかえて一生を送った人でしたが、彼はあきらめて自分の寂しさの中に閉じこもってしまうことがどうしてもできなかった。どうして自分はこんなに孤独で、寂しくなくてはならないのか。自分のすぐわきには細君というものがいるのに、どうしてl心が触れ合わないのか。何故こんなに不条理なことになっているのか、といって漱石は怒っている。彼にはもうEto_2 「形式」というようなも逃げ場がないのです。こういう怒れる漱石の姿は人間的な、あまりに人間的なものです。それほど彼が行き当った孤独な「個人」というものは、逃げ場のないところに追いつめられていた。そういう人間になってしまうのが近代人の宿命だということに、私たちはこの頃ようやく気がつきはじめたようです~~

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 鷗外と漱石、明治に生きた二人の文豪との時間は、尽きることのない知的な空間と時間を与えてくれます。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 ** 鷗外の「雁」について、2007年3月に記事がありますので、ご覧ください。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 

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                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                2008年12月 1日 (月)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                尾崎士郎、徳富蘇峰(馬込文士村、東京都大田区)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Magomeozakimonn  大正末から昭和初期を中心とした時期、多くの作家や芸術家達が居住したことから、後に馬込文士村と呼ばれた、大田区大森近辺を、散策しました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 幹線道路からすこし中へ入ると、坂の多い起伏のある台地に、昔は別荘地だったという姿が偲ばれ、そこはもう街の喧騒とは別の世界でした。この地域には今回訪ねた尾崎士郎や徳富蘇峰のほか、川端康成、石坂洋次郎、宇野千代、川端龍子、北原白秋、室生犀星、萩原朔太郎などなどが、住居を構えたとのことで、散策コースには、解説板なども整備されていました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 Magomeozakiheya 「人生劇場」で有名で、また、戦後横綱審議委員として、大相撲通としてよく知っている、尾崎士郎の記念館は、JR大森駅から歩いて10分ちょっと、閑静な住宅外の一角にありました。作家の部屋を庭からガラス越しに見られるようになっていて、人生劇場の掛け軸や、本人が使っていた机や火鉢、小物類などを眺めると、あたかも今にも写真の人物が、「やあ、いらっしゃい」と声をかけてくれるような感じになりました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 また、相撲通だったことから、大横綱双葉山との写真や、書斎前のケヤキ相手にまわし姿で鉄砲している姿などがあって、ユーモラスでした。山本周五郎も写っている友人仲間らとのまわし姿のショットもありました。年譜を見ると、25歳の時宇野千代と結婚し、31歳で別居、32歳で離婚し、同年古賀清子という女性と結婚していますね。昭和39年がんで逝去。享年66歳。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Magomesannnosodo  大正から昭和の戦前、戦中、戦後を通じて、言論界で活躍し、文化勲章も受章した徳富蘇峰の住居跡が、現在は大田区の蘇峰公園として残されており、蘇峰の収集した和漢書や時代をリードした当時の一流どころの文人や政治家などの書簡などが、展示されていました。森鴎外、与謝野晶子、吉田松陰、勝海舟、新島襄など時代を彩った人々の肉筆書簡など多数あり、興味深く見ました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Magomesohozo  蘇峰はここを「山王草堂」と称して大正3年から昭和18年まで住んだそうですが、現在は区の公園となって広い敷地がそのまま残され、晩秋のやはらかな日差しの中で、静かに時を刻んでいました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 この大森界隈を歩くと、堂々とした邸宅が軒を連ねていますが、それでも昔の広大だった各屋敷はその後の相続などで細分化を重ねていて、今、昔のままの広さを残しているのは、この蘇峰公園と、石坂泰三邸跡の「東芝会館」くらいだけだと聞きました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Magomesodomonn Magomesaisei  蘇峰公園のエントランスの秋のたたずまいと、しばらく歩いたところの室生犀星旧居を示す案内板です。そして、最後に、厳島神社というお宮さんの池の真ん中で、じっと日向ぼっこで動かずにいたカメのスナップを載せてみます。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 大森駅を10時過ぎにスタートして、3時間弱の散策の記録でした。撮影日:2008,11,26.

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Magomekame_2

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                | | コメント (6) | トラックバック (0)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                2008年10月 2日 (木)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                「漱石」をみんなで読む

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 地元での「芭蕉を読む会」で指導を受けている講師の先生が、海外出張で不在の間、生徒が輪番でスピーカーになって、勉強しています。私は、「漱石あれこれ」を受け持つことになり、2回、計3時間、話しました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Mitikusa  漱石の生きた明治の主な出来事、漱石の略歴、などから始まり、誰でも一度は読んだことのありそうな「坊ちゃん」「吾輩は猫である」の、あらすじや、漱石が作品の中で展開した、人間観察や社会・文化・芸術批評など、思いつくままに、話しました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 小説では、略歴と重ねあわせて、自伝といわれる「道草」の中から、健三とお住夫婦の葛藤や会話、、「世の中に片付くなんてものは殆んどありゃしない。一遍起った事は何時までも続くのさ。ただ色々な形に変るから他(ひと)にも自分にも解らなくなるだけの事さ」という、小説の有名な最後の段落の紹介などをしました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Gubijinnso

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 また「虞美人草」や「明暗」について、登場人物の関係図を即席で作って、物語の輪郭をつかんでもらい、「一度読んでみようか」とのモチベーションになればと思って、話してみました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                まんがで、漱石の明治時代を語ってくれる関川夏央・谷口ジローの「坊ちゃんの時代」についても、紹介しました。この本は5部作になる労作で、漱石だけでなく、同時代に活躍した森鴎外、二葉亭四迷、石川啄木、樋口一葉なども登場して、文学を通した明治時代を、わかりやすく、マンガと思えないような濠の深い切り込みのある本だと、話しました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Meiann  Bottyannhyousi_2

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Bottyannmannga

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 漱石が、小説だけでなく、味のある多くの俳句を残していることにも触れました。次のような句は、私にとって、とくに印象的です。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 城を見上げて、志を新たにしている青年期の句、苦労の多かったロンドン留学中に、故国の妻を想い、あるいは、親友子規の死を悼む痛恨、奈良への旅、長じて修善寺の大患中の生への執念、最晩年に芥川龍之介への手紙に乗せた「一巻の書」の句、いずれも、今そこに漱石が、息づいているような思いに駆られます。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 

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                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  吾妹子を夢見る春の夜となりぬ

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   筒袖や秋の棺にしたがはず

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                    奈良の春十二神将剥げ尽せり

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  生きて仰ぐ空の高さよ赤蜻蛉

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   秋立つや一巻の書の読み残し

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 

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                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                2008年7月21日 (月)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                今年もカサブランカ、そして、漱石の「それから」

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 毎年カサブランカのことを書いていますが、ことしも、きれいに咲きそろいました。(2007年7月21日「カサブランカが咲きました」2006年6月21日「カサブランカ」)。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Kasaburannka5  百合には、鬼百合、鹿の子百合、車百合、黒百合など多くの種類があり、このカサブランカは西洋種で、今年は一段背が高く咲いた感じです。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 茶色の雄しべに触れて、衣服などを着色してしまうのを避けるために、すでに取リ除いてしまったもの、そうでないものが混ざっていますが、やはり、写真には、咲いたそのままの方が、いいですね。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                ……… …………

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                      あぶら火の光に見ゆるわが蘰(かずら)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                        さ百合の花の笑まはしきかも

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  大伴家持

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 清楚な白百合の花蘰(花の髪飾り)が灯火に輝く美しさ、恋人を偲ぶ歌か?

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   夏の野の繁みに咲ける姫百合の

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                       知らえぬ恋は苦しきものぞ

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                               万葉集、大伴坂上郎女

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 百合は古く万葉集のころから謳われていて、あとの歌は片思いの恋を可憐な姫百合に託しKasaburannka7 ています。二つの句は響きあう相聞歌に思えますが、謳われた百合の花の強烈な匂いを思うとき、単なる純愛歌を超えていると想像されます。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  ……… ……… ………

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 百合の話になると、いつもながら、漱石の「それから」のことを、書かずにはおれません。主人公代助の友人平岡の妻三千代が、訪ねてくる場面です。(2007年1月2日にも書きました)。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 …………三千代は何にも答へずに室の中に這入って来た。セルの単衣の下に襦袢を重ねて、手に大きな白い百合の花を三本許提げてゐた。其百合をいきなり洋卓の上に投げる様に置いて、其横にある椅子へ腰を卸した。さうして、結つた許の銀杏返を、構はず、椅子の脊に押し付けて、
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                「あゝ苦しかつた」と云ひながら、代助の方を見て笑つた。代助は手を叩いて水を取り寄せ様とした。三千代は黙つて洋卓の上を指(さ)した。其所には代助の食後の嗽をする硝子の洋盃があつた。中に水が二口許残つてゐた………。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 …………代助は振り向きもせず、書斎へ戻つた。敷居を跨いで、中へ這入るや否や三千代の顔を見ると、三千代は先刻代助の置いて行つた洋盃を膝の上に両手で持つてゐた。其洋盃の中には、代助が庭へ空けたと同じ位に水が這入つてゐた。代助は湯呑を持つた儘、茫然として、三千代の前に立つた…………。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 小説の季節も、ちょうど百合の咲く梅雨のころ、百合の花を介して、代助と三千代のただならぬつながり、直伐には表現できないふたりののっぴきならない心のせめぎあいが、表現されていました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 この場面を松田優作と藤谷美和子が演じた映画「それから」については、やはりこのブログで、次のように書いたことがあります。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Kasaburannka4 ………………三千代の藤谷美和子が息をはずませて百合の花を手にして代助の松田優作の部屋を訪ねます。水を求める美和子を待たせて、代助が勝手のほうに新しい水をとりに部屋を出ている隙に、鈴蘭の漬けてあった鉢の水を三千代が洋盃(コップ)からごくりと飲んでしまうシーンは、彼女のふたりの関係への思い、さらには彼女の夫である平岡へのあきらめに似た感情を、その水を飲み干す行為の中に、映画ならではの表現として、演じていました………

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Sorekara2_2  「なぜあんなものを飲んだんですか」と代助は呆れて聞いた。「だって毒じゃないでしょう」と三千代は手に持った洋盃を代助の前へ出して、透かして見せた………。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Sorekara3 Sorekara5_3                                        

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 映画シーンは「チャンネルNECO」2007年1月放映分から。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  ★☆★☆★★★☆☆☆

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 夜になって、さらに開いた様子。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  Kasaburannkayoru2_2                       Kasaburannkayoru1_2

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                | | コメント (0) | トラックバック (0)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                2008年6月 4日 (水)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                根本寺(芭蕉・鹿島紀行)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Kajimagennbunn_2  「鹿島紀行」で、芭蕉が禅の師と仰ぎ交流のあった仏頂禅師を訪ねた根本寺は、鹿島神宮から歩いて20分ほどのところにあった。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 紀行(左の本文をクリックで拡大)の中で、「ふもとに、根本寺のさきの和尚、今は世をのがれて、此所におはしけるといふを聞て、尋ね入てふしぬ」……とあるが、小高い緑の丘を背景にした、瀟洒な臨済宗の寺院である。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 「Konnponnzennkei 仏頂」 について調べてみた。常陸国鹿島根本寺21世住職。江戸深川臨川寺の開山。8歳の時根本寺に入り剃髪得度し、のち住職。当時鹿島神宮宮司が寺領100石のうち50石を横領したので、それを返還させるために訴訟を起こし、かなり難航したが勝訴。その間寺社奉行へ出頭のため、江戸に滞在することが多く、江戸では根本寺と雲厳寺(下野・栃木県)共用の宿泊所臨川庵に宿し、勝訴後、根本寺を退院し、臨川寺に閑居した。のち、雲厳寺に迎えられて、そちらに住し、73歳で遷化。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 芭蕉との交流は、臨川庵滞在中以後であったと思われ、その縁で鹿島参詣の時に仏頂を訪ね、また、のちの「奥の細道」の旅で雲厳寺の仏頂の山居修業の跡に立って偲んでいる。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   おりおりにかはらぬ空の月かげも 

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                      ちゞのながめは雲のまにまに    和尚

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   月はやし梢は雨を持ながら          桃青

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   寺に寝てまこと顔なる月見哉         

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Konnponntukihayasi  本堂右手に、かなり年代を経た「月はやし……」の句碑(左)、寺院門前には比較的新しい「寺に寝て……」の句碑(左下)があった。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 「月はやし……」の句碑の説明板を見ると『この句碑は芭蕉来山、七十一年後の宝暦八年九月に建てられた県内最古の芭蕉句碑であります』とあり、『句碑保護のため拓本はご遠慮下さい』とも記されていて、その重みが伝わってきた。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                寺伝によれば、根本寺は聖徳太子による勅願寺という1500年前の建立であり、その後も鎌倉、足利、徳川の各時代に興隆をきわめていて、芭蕉が訪れた時も、堂々たる構えであったと推定される。が、幕末の天狗党の乱で兵火にあい堂塔のほとんどを焼失した。現在の姿は昭和56年の本堂落慶によるものと、石碑(右下)に刻されていた。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Konnponnjidenn

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Konnponnteraninete 私は、深川の臨川寺には5年前、雲厳寺には2年前に訪ねていて、今回の根本寺で、仏頂と芭蕉ゆかりの地は、一応すべて訪ねたことになる。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 現在の根本寺そのものは、街中の特別の派手さもない地味な佇まいで、どこにでもありそうな寺院だった。しかしながら、実際に江戸、鹿島、下野の、それぞれの歴史や、人々のつながりをたどり、今回鹿島の根本寺の現場に立って、芭蕉と仏頂が雨後の月見をし、芭蕉がこの寺に一夜の宿をとったことなどを思い起こすことで、自分なりの芭蕉伝を、もう一段深めることができた。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                         *写真は2008年5月30日撮影

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                <鹿島への旅:関連記事>

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                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                芭蕉:「鹿島詣」へ

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Tokuhonn  公民館(現在「学習館」と名前が変わっている)の生涯学習で参加している「芭蕉を読む会」で、5月末に、「鹿島紀行」を訪ねる1泊2日のバスツアーが間近になり、その準備が整いました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 芭蕉の「紀行」には、「野ざらし紀行」「鹿島紀行」「笈の小文」「更科紀行」「おくの細道」がありますが、この鹿島紀行は、芭蕉44歳の時、貞享4年8月に江戸を出立、約10日間で、江戸・行徳・布佐・利根川下り・鹿島・潮来・江戸と、旅した時のものです。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Bashotabi  その芭蕉の旅にちなんで、われわれ平成の鹿島詣は、物見遊山だけにならないようにと、あらかじめ写真のようなテキストで、2時間を3回、計6時間の原文講読中です。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 勉強会の講師の先生の、熱心な指導を受け、こんどの旅先でも、現地での講義を織り交ぜていただく予定です。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 次の句は「鹿島紀行」の芭蕉の句ですが、今度実際に現地で鑑賞したいと思っています。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   月はやし梢は雨を持ちながら

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 Jinngupannhu_2

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 ツアーのメインの目的地は、鹿島神宮と、芭蕉がその禅の師と仰いだ「仏頂和尚」が住んでいた根本寺です。 「月はやしーー」の句はその根本寺での句ですが、その句の詳細については、日を改めて、書いてみたいと思っています。 Konnponnji_2

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                ………… ……… ………

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Todai  23人が参加するにぎやかな旅行になりそうですが、自分たちで、行程を作っての旅Satoharuo なので、古典文学の世界にも触れながら、そして、現代の鹿島・潮来などの人情にも触れてみたい、ちょっと、欲張りな企画にしています。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 今回、犬吠埼で1泊します。せっかくの犬吠埼なので、灯台に上るのは当然ながら、あそこには、佐藤春夫の詩碑があるので、文学の旅である限りは、見逃したくありません。「犬吠埼旅情のうた」を載せてみました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Hanayome  そして、潮来はちょうどあやめ祭りの季節。十二橋めぐりもガッチリ組み込みました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 左の写真は、取り寄せた観光協会のパンフレットの切り抜きです。今度「潮来花嫁さん」が、この目で見られるでしょうか?

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Katorijinngu Sawara  鹿島詣のラストの目的地は、香取神宮と「小江戸佐原」の街歩き。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 こうして集めたパンフレットや、芭蕉の教科書を並べているだけで、もう、旅に出かけた気分ですが、ぜひ楽しい旅にして、このblogで、ご紹介したいと思っています。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 

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                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                2008年5月18日 (日)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                東京都美術館 公募展

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 友人が所属している光陽会という美術団体の展示会を、上野の東京都美術館で、鑑賞した(5月17日)。毎年5月に定期開催されていて、しかもその第1回は、昭和29年だったというから、相当な歴史だ。全国の会員の油彩画、水彩画、染色、版画、漆絵などが、2フロアにわたって展示されていた。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 公募展だからか、撮影が許されていたので、いくつか紹介してみる。全体にいわゆる抽象画的なものは、多くはなく、したがって、各作品ともわかりやすく、親しみやすかった。そのなかで、風景画には、一見して、「あ、ここは自分も訪ねたあの場所だ」と、思い当たるものがあった。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Gosikinumae Gosikinuma その第1、まずは、わが友人の福島県五色沼をテーマにした「晩秋」という作品。(フラッシュの反射で色が正確でないのは申し訳ないが)五色沼の蒼く透明な湖面と、黄色を中心にした静かに落ち着いた山間の風景が印象的。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 受賞候補になった力作で、東京のあと、広島や京都で順次開催される展示にも、選ばれているとのこと。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 右の写真は、私が夏に同じ五色沼で撮ったもので、並べて載せるのは、いささか失礼な気もするが、同じ情景に佇んだ記録として、紹介させていただいた。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Toshogu_2

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Toshogue  日光の東照宮をアップで描かれた作品が、受賞作としてあった。唐様というのか、あの東照宮の華麗な造り、屋根、柱、ひとつひとつの彫物、それらに張り付けられた金箔に至るまで、丹念に描かれていた。その巧みな構図もあって、右の私のスナップなどとはケタ違いの迫力と重厚感のある絵だった。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Jodohama 「三陸海岸」という作品も、すぐ「これは浄土ヶ浜のあの展望台からの風景だ」とわかって、親しみがもてた。私が昨年秋撮った、ほぼ同じところからの写真を載せてみる。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Jodotennbodai2_2 Cotswolds47

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Burenamupalace  外国の風景で「ブレナム宮殿」という作品が目にとまった。イギリスのオックスフォードの北部にある宮殿で、私も行ったことがある(右の写真)。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 かのウインストン・チャーチルの何代目か上の先祖が、スペイン継承戦争中のブレナムの戦いで立てた戦功によって当時のアン女王から贈られた大邸宅。ウインストンチャーチルの生家でもあり、1987年に世界遺産に登録されている。外観や庭の堂々たる景観は言うに及ばず、内部の豪華な造りや調度品の数々は、「さすが大英帝国」と唸るに十分だった記憶がある。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Ariakesann Toono_3 「有明山遠望」という、明るい色調の田園風景を描いたものがあった。信州安曇野に有明山という山があったので、たぶん、それを描いたものだろう。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 15年ほど前、私が長野にしばらく住んだころ、四季折々訪ねたものだ。この作品の季節は秋のようだが、私は冬の晴れた未明、松本のホテルの窓から、西の方を見たとき、いわゆるモルゲンロートというのだろうか、真っ白な雪を抱いたアルプスの峯々に、オレンジ色の朝日が照りつけた時の記憶が鮮明だ。それは、たぶんこの絵の有明山の方角だったと思う。あの透明で神秘的としか言いようのない北アルプスの景観は、忘れられない。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 右の写真は、岩手県遠野で私が撮ったものだが、安曇野といい、遠野といい、日本の原風景がいつまでも、このままであってほしい。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 鑑賞するだけで画才のない私だが、ほかにも記憶に残る作品が多かった。友人も話していたが、一つの作品の制作過程では、テーマの選定、構図、色づかい、など構想を固め、表装して仕上げるまでに、実にエネルギーを費やしているのだと思う。各作品から伝わってくる作者の気持ち・気迫は、私が各訪問地を通り過ぎつつ撮影した写真とは、全く異質の訴えかけるものを、秘めていることがよくわかった。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                

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                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                2008年5月10日 (土)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                山梨県立美術館

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                MireticketYamanasizouhinnsho  連休の5月3日、甲府市の山梨県立美術館を訪ねた。2回目だが、当時購入した本棚の「山梨県立美術館 蔵品抄」(第8版の発行)が1986年とあるので、20年以上、もうすこし最近としても、10年余ぶりの再訪ということになる。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 いうまでもなく、ここは、19世紀のフランスの農民画家、ミレーの「種まく人」で知られており、私の前回訪問の記憶も、その「種まく人」だけといっても過言ではない。今回訪ねた常設展のチケットも、やはりこの絵が代表していた。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 「種まく人」(1850年)の解説を、蔵品抄から抜粋してみる。……秋の夕暮時、若い農夫が畝の斜面を右方に下りながら右手を振り回して力強く種をまく。右奥では夕日を浴びた2頭の牛が大地を耕す……。背景の光と対照的に農夫の顔は暗く、しのび寄る闇と、来るべき冬の季節を象徴するかのようである。左奥には烏がまいたばかりの種をついばみに舞い降りる…………

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  「種まく人」の展示された部屋がずいぶん暗かった。前回鑑賞の記憶では、この絵に劇場のスポットライトのような照明があてられ、ホール全体に浮き出るような印象だったが、記憶のあいまいさのせいなのだろうか?しかし、今回暗い部屋での、150年前の陰鬱な大作との再会では、ミレーが描いた彼の故郷の重ぐるしい風景、若い農夫がやり場のない苦しみを種まきに託して押し殺し、力に任せて夕暮れの斜めの畝に種をバアッーとまいている、その内面が、伝わってきた。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 このほかのミレーの展示作品では、若妻の肖像を描いた「ポーリーヌ・V・オノの肖像」(このモナリザにも似た若妻は結婚後わずか3年後に没している)、冬の夕暮れ時の一人の羊飼いを描いた「夕暮れに羊を連れ帰る羊飼い」が、強く印象に残った。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 館内の展示は、広々とゆったりしたスペース。都心の混雑する美術館のように、背中を押される心配などまったくない。150年以上生き続けてきた、ほんものの絵の前に、じっと立ち止まって鑑賞できる醍醐味は、まさに極上の時間といえた。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Mireotibo  いま美術館では「田園讃歌 近代絵画に見る自然と人間」という企画展が開かれていて、同館所蔵の「落ち穂拾い、夏」や、モネの「ジヴェルニーの積みわら、夕日」などを中心に、ゴッホ、ピサロ、日本画家の岸田劉生、萬鉄五郎などの農耕・田園を主題とした作品が一堂に会しているということだった。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 魅力的な企画だったが、常設展鑑賞だけで精いっぱいだったことや、時間の関係で、(そして、あまり大きな声では言えないが、65歳以上は常設展無料、企画展は有料)、パスして、館の外に出、広々とした美術館敷地・屋外彫刻(芸術の森公園)を、散策することとした。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                2709bijutukann 2711bunngakukann  外は広々としていて、美術館と対面する位置の文学館が、堂々として美しか2705rahuzo った。噴水の裸婦像がみずみずしく、話しかけるとなにか答えてくれているようでもあった。フランスの彫刻家マイヨール(1861~1944)の作品。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 文学館では、「芥川龍之介の手紙」という企画展を開催していた。文化の香りがした。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 2699mirezo 2703karesannsui園内には、ほかに、ミレーとルソーの像(二人は同時代に、フランスのバルヴィゾンですごした)、山梨の俳人飯田蛇笏の句碑、ヘンリー・ムーアの彫刻など、見るものに事欠かなかった。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 一方、「枯山水」の案内板に沿って、足を運んだが、そこだけは片手落ちというか、手入れがほとんどされておらず、かって2~3ケ月ほど散髪に行かなかった時の自分のボサボサ頭みたいで、興ざめした。残念だった。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 あとひとつ、館内レストランはゆったりしていて、ランチでオーダーした「地鶏入りドリア」は、なかなかおいしかった。ボリュームもあり、値段もリーズナブルだった。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                     <撮影日:2008年5月3日>

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                | | コメント (2) | トラックバック (1)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                2008年4月26日 (土)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                池泉回遊式庭園(京都の春 11)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                2473niwakoi 今回の京都観光では、御所のすぐ前の平安会館に泊った。市内中心部はもちろん、嵯峨野へも、その反対側の東山へも、手軽に出かけられて、京都駅からもさほど遠くないところにある。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 敷地内の庭園が目を惹いた。「池泉回遊式日本庭園」(Japanese Style Strolling Pond Garden)とのことで、たぶん、ホテル自慢の庭園だと思われ、案内マップがロビーに備え付けてあった。2673niwamap

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 それによると、この敷地は遠く平安時代に、天皇の台所を預かる内膳司に勤務する役人の宿舎だったとの記録があり、以後、戦国時代には織田信長の関係者が、安土桃山時代は糸商人、江戸時代には公家屋敷、そして明治になって、日の出新聞(現京都新聞)社長の所有などを経て、今に至るとの来歴………。さすが京都、ホテルでもすぐ1,000年さかのぼってしまう。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                542niwaisi_2  500坪の園内には2月のコウバイにはじまり、3月ジンチョウゲ、4月アセビ、5月はツツジ、8月にはミズヒキソウ、10月キンモクセイ、11月のモミジ、そして12月はセンリョウ・マンリョウと、四季折々の花が循環し、灯篭、滝、四阿(あずまや)、池の鯉など、味わうものに事欠かない。そのなかで、池にかかる橋や、庭におりる沓脱石などに、京都ゆかりの、鞍馬石、白川石、加茂石が配置されていることに魅かれて、案内書にそって、一つ一つ確かめ、足をかけてみた。すべてがわかるべくもないが、じっくり二の足の裏っかわから文字通り体感してみると、庭にも実に深遠な鑑賞の仕方・楽しみ方が、あるのではと思いあたった。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 ちなみに、「池泉回遊式庭園」とあったので、今まで行ったことのあるいくつかを振り返ってみた。京都の金閣寺、天竜寺、金沢の兼六園も「池泉回遊式」、岡山の後楽園は、「林泉回遊式」、そして、かの竜安寺は、「石庭式枯山水」とあった。なるほどなるほど。……(わが庭は、「猫の額式?」「お隣接近・ごった煮式?)……

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 誰かに、『仏像は奈良、庭園は京都』と聞いたことがある。これも思い当たる整理だ。今後、庭園鑑賞について、もう少し、勉強して訪ねてみようと思っている。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                2579simeigatake  庭園を見下ろせる部屋から、東の方に目をやると、御所の向こうに比叡山四明ケ嶽と思われる頂が眺められた。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                2587niwayoru  夕食の後、もうちど庭に下りてみた。灯篭の幽玄な姿が静かに池に映じており、朝には元気よく泳いでいた鯉たちは、じっと眠りにおちていて、池の水面に、さざ波さえも見ることはなかった。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                (2008年3月26日~28日撮影)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                <余談>ホテルの前は、京都のメイン道路である烏丸通。しかし、そこから市バスに乗ろうとしたが、停留所がない。尋ねてみると「道路の下に地下鉄が出来たのを機に、バスは走らなくなった。7分ほどかかるが、地下鉄烏丸今出川まで、お歩きにならなくてはなりません」とのこと。京都の合理主義、そして、地方財政のここまで徹底せざるを得ない厳しさを、実感した。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                | | コメント (0) | トラックバック (0)

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                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                盆栽苑(昭和記念公園)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Bonnsaipanhu 昭和記念公園の中に「盆栽苑」があり、普段盆栽には無縁ですが、立ち寄りました(2008年4月2日)。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                063irikuti 苑の入口はレンギョウや雪柳が咲き乱れていましたが、そこから先は静寂の空間です。展示されていた、個々の盆栽を、お見せする前に、「樹形のいろいろ」が解説されていたので、紹介します。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Bonnsaikatati_3 「樹形のいろいろ」です。拡大してみてください。盆栽と一口に言っても、直幹、模様木、……株立ち、石付き、など、いくつかパターン(樹形)があることがわかります。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                『盆栽の三要素』というのがあるそうです。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 根張り:根が四方八方に張り出して、安定感と力強さがあること
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 幹:立ち上がりが素直で、上に行くほど自然に細くなっていくこと
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 枝配り:幹からでている枝の太さや間隔がバランスよく配置されていること

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                ……すべてそろっているかどうかはともかく、ひとつひとつの盆栽に大きな自然の景色の広がりを感じてもらえばいい、とのこと。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                <写真>

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 1段目:左から、楓、蝦夷松、寄せ植え
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 2段目:左から、栂、五葉松、くちなし
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 3段目:左から、ヒメツルソバほか、五葉松(懸崖)、五葉松の根
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 4段目:左から、寒桜、がじゅまる、床の間の五葉松

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                ………… …………… ……………

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                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                ………… ………… …………

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 075kannzakura 076gajumaru                    077goyomatutokonoma

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                ………… ………… …………

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 盆栽は樹齢を重ねた木を、鉢又は石に植え付けて長く培養が続けられ、さまざまな自然の風情を表わすよう作り上げられたもので、自然を愛する日本の優しい心に育て上げらた日本古代の伝統文化であり、植物の成長とともに楽しむ「生きた芸術」と呼ばれています(案内書による)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 その観点からすれば、このようにカメラに収める前に、ひとつひとつの盆栽と向き合って、もっと、自分の目で見て観察し、語り合うべきなのでしょうか。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 それはともかく、このように、愛しまれて育ってきたそれぞれの盆栽を、改めて眺めると、次にこの盆栽苑を訪れる季節には、どのように変化しているのか?、再会がたのしみです。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                | | コメント (0) | トラックバック (0)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                2008年3月10日 (月)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                吉野山と芭蕉(笈の小文)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Bashoyoshinomap  芭蕉は貞享4年(1687年)10月、江戸から東海道を下り、伊良湖、名古屋をなど各地で俳席を重ねながら、歳末に故郷伊賀上野に着いて越年しています。芭蕉44歳の時です。これが「笈の小文」の旅です。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 このあと2月に伊勢神宮に参拝、3月に伊良湖で同伴を約束した坪井杜国を伴い、吉野の花見を目指します。吉野のあと、高野山・和歌の浦・奈良・大坂・須磨・明石を巡遊し、4月23日の京都で「笈の小文」が完結です。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 きょうは、その「よし野」に出かけるにあたっての句を鑑賞します。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                      乾坤無住同行二人

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                    よし野にて櫻見せふぞ檜の木笠

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   よし野にて我も見せふぞ檜の木笠  万菊丸

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                <注記>

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 貞享5年の春何月幾日、芭蕉老人よし野山の花見むとて、伊賀の国より旅立申されしに、尾張の国の杜国も是に供せられて、ともに筆をとって檜の木笠の裏に狂ぜしと也(笈日記)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                <句意>

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • いよいよ旅立ちだ。そういえばこの檜笠もまた道連れ、檜笠よ、さあ吉野の山に行って、心ゆくまで桜の花をみせてやろう。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 花の名所の吉野に連れて行って、わたしも見事な桜花をみせてやろうぞ。わたしの檜笠よ(万菊丸)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                <句評> 

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 自問自答の句。檜笠は法師世捨人などに応る檜笠なれば、やがて此笠もよしのの花見させんと興じて心浮立ばかりの旅心おもひやらるる也、杜国にも笠にも心通ふか(「芭蕉句解」東海呑吐著、明和6年)
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 此檜笠は越路名産にして、翁の秘蔵世に知る所也(「笈の底」寛政7年、信夫翁信胤著)
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 桜と檜と類物を掛合わせて人情をうつせり。猶茲に供しぬる万菊丸に見せふぞと戯れ給ふ響あり(「芭蕉翁発句索引」衛足杜哉著、寛政年間)
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 檜笠を擬人的にして戯れ興じた句である。多少滑稽の趣味を持ってゐる(「芭蕉発句評釈」内藤鳴雪著、明治37年)
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 同じく戯れ事であっても、芭蕉の「檜の木笠」に対する言葉が、如何にもしみじみした感じを与へるのは、その人の本然の声だからです(「芭蕉名句評釈」島田青峰、昭和9年)
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 吉野の花へのあこがれと、旅の楽しさとに浮立つ心が句面に溢れて見える(「芭蕉俳諧新講」頴原退蔵、昭和9年~22年)
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 句としては戯れの気分が主となってゐるが、句に興に乗った勢いがあふれてゐて、春はあこがれの吉野に入らんとする心の弾みが見られる。その心の弾みは、勿論であるから、そこにかういふ気分を生んだものであると思ふ(「芭蕉講座発句篇」加藤楸邨、昭和18年~23年)
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 「乾坤無住同行二人」とは行脚僧などが笠の裏に書く文句で、広い天地の間、一処にとどまることなく仏と二人移り歩くという意味で、ここでは自分と杜国の二人の意味に転用した。芭蕉の杜国に対する思いの深さを示している。杜国と二人で旅に出るということがよほど楽しかったとみえて、その心躍りがこの句のリズムに見える。檜の木笠に呼びかけた形で、吉野でお前に桜を見せよぞと言ったもの(「芭蕉全発句」山本健吉 昭和49年)
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 笠に呼びかける体に発想した風雅の作である。愛弟子杜国を連れての旅で、念願の吉野へ向かうのであるから、芭蕉の心は弾んでいる(芭蕉全句」加藤楸邨 昭和44年)
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 口調にどこやら狂言の味があり、それが二人の風狂を清くしているとみられる(「松尾芭蕉全発句」堀信夫 平成7年)。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                …………… ………………………

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Yosinoyama

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                吉野にはじめて行ったのは15年ほど前、4月の初めで、そのときは、桜がたった1本咲いていました。2度目は平成4年の9月末で、まだ夏の名残りのある頃でした。最初の写真は吉野の奥千本といわれるあたりから撮った吉野山の遠景で、真ん中あたりに「蔵王堂」が見えています。桜の満開のころには、山一面が燃えるのだろうと、想像していました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Yosinosaigyo  Bashonyoirinnji 次の2枚、左は芭蕉の吉野行きの大きな目的であった西行の足跡たどりですが、その西行庵の案内板。当日時間がなく、ここで引き返したのが心残り。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                右は、吉野如意輪寺にあった芭蕉の句碑で

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                      御廟年経て忍は何をしのぶ草

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                とありました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Zaodo Zaodo2 その日は蔵王堂で、国宝の「金剛蔵王大権現」の御開帳が行われていて、本殿ではお堂いっぱいの信者たちが、勧行の最中で、大権現様は足元だけしか見えませんでしたが、やいへん荘厳な感じを受けたのを覚えています。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                            <句評ほかは、「芭蕉を読む会」山崎省次先生講義録による>

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                | | コメント (0) | トラックバック (0)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                2008年3月 5日 (水)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                ロートレック展(サントリー美術館)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Rotorek1  サントリー美術館での「ロートレック展」を鑑賞しました。おなじ六本木、国立新美術館の「横山大観展」のあと、足を延ばしました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 「パリ、美しき時代を生きて」という副題の企画が示すように、ロートレック(1864~1901)は、19世紀末のフランスを代表する画家であり、歓楽の街モンマルトル(パリ)の、ダンスホールやキャバレー、劇場、娼館などを舞台に、芸人や娼婦などの人々の姿が、作品として展示されていました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 大きな垂れ幕の絵は「「黒いボアの女」という、社交界の女性かあるいは娼婦なのか、謎めいた女性をモデルにしたもので、会場入ってすぐ目につきました。黒いぶかぶかしたドレスの広い肩幅の上の青白い顔、なかんずく睨みつけられているような大きな瞳がすごかった。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Rotorek2  ガイドの表紙になっていた、黒い服の踊り子の絵。踊り子の右の男性は詩人・文芸評論家、舞台の首から下だけ描かれている黒い手袋の女は当時の人気歌手という。ロートレックが多く手がけたポスター絵で、エドガー・ドガや、日本の浮世絵からも、ヒントを得ているとのことでした。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 Rotorek3 ベビー服風のドレスの、黒猫を抱いた女性は、当時のアイルランド出身の人気歌手だそうで、紺と赤のはなやかさが美しかった。ロンドンでデビューして、パリにやってきた彼女は、古いアイルランド民謡や黒人歌謡を、無邪気を装いながらも、実はエロティックな含意をもつきわどい内容の歌い、人気を博していたとのこと。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 なんでも、彼女は同時代のイギリス出身の踊り子とレスビアンの関係という公然の秘密があり、ロートレックは、その雰囲気も十分に意識していたということでした。いかにも歓楽の街、パリ・モンマルトル………。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Rotorek5

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 美術館のあるビルは、ショップやカフェが多彩に出店し、その中心にある吹き抜けの解放感は、しばらくぶりに都心に出た私には、鮮烈な印象でした。どういう仕掛けになっているのか、写真の天井の真上から滴り落ちる数本の直線の水を見ていると、脳内の余計な思考が、どこかへ洗い流されてしまいました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Rotorek4  東京ミッドタウンは、江戸時代、萩藩・毛利家下屋敷、明治時代に陸軍駐屯地となり、終戦後には米軍将校宿舎、その後は防衛庁の檜町庁舎として使われていたという。その跡地が、昨年3月に文化とビジネスの新しくオープンしたのですが、新宿からのアクセスも便利で、これからも時々、出かけてみたい街となりました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                | | コメント (2) | トラックバック (0)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                2008年2月26日 (火)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                横山大観展(国立新美術館)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Taikannticket  国立新美術館の「横山大観展」を見てきました。大観は明治元年生まれ、昭和33年没(1868~1958年)で、2008年の今年は「没後50年」、その記念展示と銘打たれていました。本物の大観を見るのは、初めて。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 明治、大正、昭和、それも戦後の混乱が収まって、経済的繁栄に歩みだす1958年(昭和33年)まで存命した、日本画家の巨人の迫力ある展示でした。 私の子供のころ小説は夏目漱石、画家は横山大観と、片田舎の小学生でも知っていたビッグネームでした。ちなみに、漱石は大観の1年前の慶応3年に生れ、大正5年49歳で没、大観は慶応4年(明治元年)生まれで、90歳の長命でした。2月26日に亡くなっているので、たまたま、その命日に見に行ったことになります。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 どんな画家にも思想や哲学があるのでしょうが、大観の絵からは、画家の情熱の底流に、深く重厚な「思想」ないし「哲学」が、ひときわ濃厚に流れていることが、素人目にも感じられました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Taikannfuji ……「東洋画」の本質というものは老荘と、禅の無垢枯淡というものと、東洋精神の本来の虚無とがピッタリと一緒になった時に出来るもので、絵の絶対境地は口でいったり、筆で書いて説明出来るものではなく、ほんとうの心から感心せしめるようなものでなくては駄目です………と、大観は言っているそうですが、雰囲気としてわかるような大作の数々でした。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 写真上の「群青富士(部分)」をはじめ、40メートルにも及ぶ「生々流転」の絵巻、見終わったと思ったらもうひとつ27メートルの「四時山水」の絵巻があり、その美しさ悠久さに、画家の闘魂を感じました。そして中国江南の洞庭湖近辺を描いた「瀟湘八景」が、特に印象に残りました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Taikannkari 漱石はその「瀟湘八景」(平沙落雁、写真)について、次のように述べているそうです。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                『大観君の八景を見ると、此八景にどうしても明治の画家横山大観に特有な八景であるといふ感じが出てくる。………横山大観君になってゐる。それを説明すると暇が要るが、一言でいふと、君の絵には気の利いた様な間の抜けた様な趣があって、大変に巧な手際を見せると同時に、変に無粋な無頓着な所も具へている。君の絵に見る脱俗の気は高士禅僧のそれと違って、もっと平民的な呑気なものである。八景のうちにある雁は丸で揚羽の鶴の様に無格好ではないか。さうして夫が平気でいくつも蚊のように飛んでゐるではないか。さうして雲だか陸だか分らない上の方に無造作に並んでゐるではないか………』

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 余談ながら、あの「近江八景」は、この「瀟湘八景」を模して、名づけられたものでした。落雁は「堅田落雁」でした。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 余談をもうひとつ、酒を愛した大観に、広島の「酔心」の社長が、「生涯、酒を送る」と送り続け、大観はそのお礼に毎年1作の絵を、送り返したとか……。また、展示の中で、大観の「谷中鶯」(岡倉天心の詩)を肉声で歌うレコードが、音声ガイドから流れました。イヤホンの効果で、突然、生身の大画家から直接話しかけられたようでした。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  谷中うぐいす初音の血に染む紅梅花 堂々男は死んでもよい

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  奇骨侠骨開落栄枯は何のその 堂々男は死んでもよい

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 明治の気骨に溢れたこの歌は、当時全国の花街で歌われ、大観は生涯この歌を愛したと、解説書にありました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Sinnkokuritu080225  正午前に、見終わったころ、会場は長蛇の列。美術館の外は、春一番が終わった翌々日で、日差しには、春がありましたが、風はまだまだ冷たい2月でした。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                *追記:本稿に、さがみの さんから、漱石と大観に関して、コメントをいただきました……夏目漱石の作品評を興味深く読みました。大正元年の作品に対するものなので、もし漱石・大観がともに長寿をまっとうしていれば晩年の大観の作品に漱石はどのような評を述べただろうかと思い巡らせてしまいました……。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Sosekinannga  大正元年のころ、漱石は画家津田清楓に知己を得て、南画に親しんだそうです。その最初の南画が、大正元年11月に「山上有山図」と題したもの(写真)で、このあと、大正4年までに、いくつかの彩色南画に、精力的に取り組んだとあります。残念ながら、晩年の大観作品は知らずに、早逝してしまいました。<この項、2007年11月の「文豪・夏目漱石展」公式ガイドから>。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                | | コメント (3) | トラックバック (0)

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                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                近衛家1000年の名宝(東京国立博物館)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Kyutei6 Kyutei2 東京国立博物館で、「宮廷のみやび 近衛家1000年の名宝」展を、見てきました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 近衛家というのは「五摂家」の筆頭、すなわち、鎌足以来の藤原氏嫡流で公家の家格の頂点に立った5家、大納言・右大臣・左大臣を経て摂政・関白に昇任できた、近衛家・九条家・一条家・二条家・鷹司家のなかのナンバーワンで、今回の展示は、その名宝20万点の全貌を俯瞰するもの、ということでした。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Kyutei3  せいぜい例の「なんでも鑑定団」を時折見ている程度の私にとって、縁遠い世界なのですが、一歩会場に足を踏み入れただけで、本物のすごさ、展示物そのものが、日本歴史の遠い時代から蘇ってきて、圧倒されたものでした。宮廷らしき絵は「春日権現霊験記絵巻(部分)」で、江戸時代の近衛家煕という当主が書を書いたものとありました。(『なんでもーー』だったらたぶん画面に入りきらないほどのゼロが並ぶと思います)。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 会場入り口にあった藤原鎌足像(下の写真の1番目)は、奈良県桜井市の多武峰(とうのみね)の談山神社に参詣した際、みかけた記憶がありました(あるいはよく似たものか?、本物は奈良国立博物館)。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 Kyutei12 イヤホンガイドを頼りに、1000年の昔から、明治維新のころまでの、数々の名品にあっという間に時間が過ぎましたが、平重盛の自筆になる掛け軸や、幕末から明治維新にかけてのキーマンであった孝明天皇の直筆による歌巻などは、その人物がそのまま、今に生きているようで、その場で直に対話しているような不思議な感覚になったものでした。このほかにも、歴代天皇と近衛家の人たちの書簡などで、何人かの天皇の直筆が、次々と展示されていたのは、さすが、五摂家と、感じ入りました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                ……… ………… …………

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                平 重盛(たいら の しげもり)は、平安時代末期の武将、公爵。平清盛の嫡男。1138~1179.

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                保元・平治の乱で若き武将として父清盛を助けて相次いで戦功を上げ、父の立身とともに累進し、最終的には左近近衛大将、正二位内大臣にまで出世した。嫡男ではあったが正妻の時子の子である宗森盛とは母が異なり有力な外戚の庇護はなく、室が藤原成親の妹・経子であったため、成親失脚後は一門のなかでは孤立気味であった。鹿ケ谷事件の際には清盛の後白河法皇幽閉を身をもって制止するなど、政治的には後白河に近い立場だった。清盛の後継者として期待されながらも、清盛と後白河の対立では有効な対策をとることができないまま、父に先立ち病没した。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                六波羅小松第に居を構えていたことから、小松殿ないし小松内大臣とも、またその邸宅に48の灯篭を建てていたことから灯篭大臣とも称された。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   ………… …………

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                孝明天皇(こうめいてんのう、1831 ‐1867)は、江戸期における121代天皇、在位:1846年3月‐1866年12月)。在位中の徳川将軍は、12代家慶・13代家定・14代家茂・15代慶喜。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                1853年のペリー来航以来、幕府政治に発言力を持ち、江戸幕府大老井伊直弼が諸外国と独断で条約を結ぶとこれに不信を示し、一時は攘夷さえ表明したこともあった。孝明天皇は攘夷の意思が激しく、妹・和宮を第14代・徳川家茂に嫁がせるなど、公武合体運動を推進し、あくまで鎖国を望んだ。家茂が上洛してきたときは、攘夷祈願のために賀茂神社や石清水八幡宮に行幸している。京都守護職であった会津藩主松平容保への信任は特に厚かったといわれる。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Kyutei1 しかし1865年(慶応元年)、攘夷運動の最大の要因は孝明天皇の存在にあると見た諸外国海軍は艦隊を大阪湾に入れて天皇に条約の勅許を要求して、天皇も事態の深刻さを悟って条約の勅許が出される事となった。だが、この年には実際には宮中のみに留まったものの西洋医学の禁止を命じるなど、保守的な姿勢は崩さなかった(もっとも、遺品として時計が残るなど、西洋文明を全く否定していたわけではない)。その翌1866年(慶応2年)12月25日、義弟・家茂の後を追うように、在位21年にして崩御。享年35。死因は天然痘と診断された。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                突然の崩御であったため、倒幕派に暗殺されたとする説が、資料的にも医学的にも非常に有力である。この説によれば、孝明天皇は保守的な人物で倒幕の意思が無かったため、倒幕派であった岩倉具視などにとって最大の障害であり、暗殺されたのだという。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 (平重盛、孝明天皇略記は、ウイキペディア抜粋,写真下は国立博物館の平成館)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                | | コメント (3) | トラックバック (1)

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                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                芭蕉と伊勢・山田、「笈の小文」

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Isemapbasho  芭蕉講座「笈の小文」シリーズです。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 伊勢神宮の近く、菩提山神宮寺での句を勉強します。神宮寺は行基が開基で、良仁が中興。芭蕉が訪れた当時、すでに荒廃していた。聖武天皇の勅願寺で、往時は非常に壮大なものであったという。伊勢市の西行谷の近くに位置し、伽藍は弘長年間(1261漢4)に焼失、のち、宝暦10年(1760)再建。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                        此山のかなしさ告よ野老堀  芭蕉

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                          (このやまの かなしさつげよ ところほり)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                <野老(ところ)>

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 植物名。やまいもの科の多年生つる草。山野に自生する。やまいもに似るが、やまいもは葉が対生し、根茎は直下するに対し、葉が互生し、根茎は横に伸びる。その長さはときに、5,6メートルに及ぶ。根は黄色で節が多く長い鬚根を叢生する。俗に老人の鬚髭(しゅし)に見立て、野老の字をあて、海老とともに、今では食べないが,神社の祭りや新春の蓬莱の飾りに用するなど、供え物として登場してくる。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                <句意>

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • かって勅願寺として大伽藍を誇っていた菩提山のほとりで野老を掘っている里人よ、今は荒廃してしまった悲しい転変の有様を語って聞かせてくれ

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                <句評>

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 小野篁(おののたかむら)の罪冠(こうぶ)りて遠路(おんる)の時、船中の歌に「人には告よ海士(あま)の釣舟と詠める懸合の趣意相通ふ吟也(「笈の底」信夫翁倍胤 寛政7年)
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 野老を掘る者の如何にも淋しい味を持ってゐるのを、山寺の淋しいのに思い合わせて野老堀の翁よ、此山寺のさびしき趣を告げ知らせてくれよと、言ったのである(「芭蕉俳句評釈」内藤鳴雪、、明治37年)
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 此寺の往古は堂塔伽藍荘厳ならしと聞けど、今はただ空しく其址にそれと知らるるのみである。其頽破したる時代の悲しさを告げよと、折柄其あたりに茂っている野老を見て、野老掘る人を仮想し、心中に希望したのである(芭蕉句集新譜」服部畊石、昭和7年)
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 句は淋しい寺のあたりで、野老を掘って居る里人に向って、汝はこの山寺の盛衰のさまを知って居るだろう。その悲しさ転変を語ってくれよと呼びかけたのである。野老掘るわざがすでに侘しいものである。掘る人にも老いの姿が想はれる。その侘びた情景に、芭蕉は山寺の悲しい歴史を切に聞きたかったのだ。「悲しさ告げよ」といふ端的な言葉がさうした心情を強く現わして居る。また、「この山の」といふのが、「山寺の」より一層迫った感じを与える(「芭蕉俳句新講」頴原退蔵、昭和9~22年)。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 古く栄えたものが今は見る影もない。それが「此山のかなしさ」であり、常に芭蕉の頭の中にある、主題の一つである。そうして「此山のかなしさ」を鍬をかついでいる行き合わせた野老堀りに対して「告げよ」と呼びかけたところが俳諧である(「芭蕉日本古典鑑賞講座」井本農一、昭和33年)。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 野老堀といふものの山寺の荒頽した様を思はしめ恰好のものであると思はれる。廃寺のほとりに野老掘る趣は芭蕉の懐古の心を一入そそったものであろう(「芭蕉講座発句篇」加藤楸邨、昭和18年~23年)。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 景情ともに侘しさを強調している(「芭蕉全発句」山本健吉、昭和49年)。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 初案の「山寺の」よりは、「此の山の」のほうが、句はぐっと生動してくる。「山寺の」は傍観する姿であるが、「此の山の」になると、眼前の荒頽を浸透しあって、芭蕉がその境地の中に深く入り込んでいるからである。(中略)西行に「伊勢にて菩提山上人、対月述懐し侍りしに、「めぐりあはで雲のよそにはなりぬとも月になれゆくむつびわするな」(西行法師家集)という歌がある。今句意に直接関係はないが、芭蕉の此の山に関心を持ったのはこの歌の心にひかれたからであろう。(中略)「此の山のかなしさ告げよ」というややあらたまったよびかけが、「野老堀」に対してなされているところに、俳諧味が生かされているのである。老いの悲しみを感じさせる効果をもつ(「芭蕉全句」加藤楸邨、昭和47年)。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 懐旧の情を野老堀の身の上に見出したところに、俳諧の新しみがあるとみるべきである。また「告よ」の一語に「わたの原八十島かけて漕ぎいでて人には告げよ海人の釣舟」(古今・羇旅)と歌った小野篁以来の流離の余意が感じられる(「松尾芭蕉全発句」堀信夫、平成7年)。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 (資料:山崎章次先生講義録から)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 ⁂⁂⁂⁂ ⁂⁂⁂⁂⁂

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 句評のなかに、『古く栄えたものが今は見る影もない。それが「此山のかなしさ」であり、常に芭蕉の頭の中にある、主題の一つである』とありましたが、「奥の細道」、平泉でのあまりに有名な、句を思い出さずにはおれません(写真は平泉毛越寺)。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   夏草や兵どもが夢の跡

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Bashou17    

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   

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                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                さまざまの事おもひ出す櫻哉(芭蕉)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                     さまざまの事おもひ出す櫻哉   芭蕉 

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 芭蕉が「笈の小文」の旅で、ふるさと伊賀上野に立ち寄った春(貞享5年、1688年)、芭蕉の故主藤堂蝉吟公の別荘に招かれて、その嗣子探丸とともに桜花を見ながら昔の思い出にふけった句とされています。きょうは、参加している「芭蕉を読む会」での、山崎省次先生の講義録を、そのまま紹介します。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                <句意> 

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 旧主の別邸に招かれて、庭前に咲きほこる桜の花を見るにつけ、在りし日のさまざまのことが思い出されて、感慨無量である。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                <句評>

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 着想があまりに単純にして少しく平凡であるから、前書なしの句としては大なる趣を認められぬが、前書があってかかる場合の句として、景情共に叙写されていて、先ず佳句の方へ入れてよかろう(「芭蕉俳句評釈」明治37年 内藤鳴聖)。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 彼が蝉吟公の死を動機として藤堂家を去ってから、この時まで22年の歳月が流れている。芭蕉の胸はおそらく千万無量の感慨に充たされたことであろう。彼はその千万無量の感慨を、真正面から「さまざまの事おもひだす」と吐き出すように抒べて居る。かういう句は之て輪郭的になり勝ちのもので、この句にも多少さうした憾みがないとは言へぬが、かうまで大胆に踏みきってしまうことは、却々容易に出来難いところである。一見平凡他寄なしと思はせる句でありながら、どことなく芭蕉の句作態度がしっかり据っていることを示す作である(「芭蕉俳句新釈」大正14年、半田民平。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • ただそのまま叙べた言葉の中に無限の思いが籠って居る(「芭蕉俳句新講」昭和9年~22年、頴原退蔵)。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • すべて思いが眼前の桜から発して桜に戻ってくるのである。「さまざまの事思い出す」はとりとめもないやうでゐて、さういふより外はない胸裡の動きを語ってゐるやうに思ふ(「芭蕉講座発句篇」昭和18年~23年加藤楸邨)。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • こういう句は、句の善悪よりもその場に臨んだ作者の言語を絶した思いを汲みとるべきでものである(「芭蕉全発句」昭和49年 山本健吉)。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 「花」といわず「桜」と言ったところに桜の全容が時間を負ってそびえている感じがある(「芭蕉全句」昭和44年、加藤楸邨)。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 一般に、思い出は現実性を捨象すればするほど美しくなる。ことに20余年という長い歳月の流れに洗われた思い出には、純度の高い幻想のみが持つ透きとおるような美しさがある。いまを盛りの花桜を眼前にして、芭蕉が見ているものは、たぐればかれこれの境もなく、またあとさきの序(ついで)もなく、湧き出るこれらの思い出のみである。「さまざまの事おもひ出す」というのは、一見あまりにも稚拙な言葉のように見えて、実は右のような興趣を最も正確に伝える粉骨の惜辞であるといえよう(「松尾芭蕉全発句」昭和60年、堀信夫)。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 探丸子は次の脇句をつけました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                    春の日永う(はやく)筆にくれ行(暮れゆく)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Wanituka2

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Yamataka3  写真左は山梨県八ヶ岳山麓、わに塚の桜。右は同じく山高神代櫻で、芭蕉と直接関係はありません。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                | | コメント (0) | トラックバック (0)

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                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                フェルメール「牛乳を注ぐ女」展

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Ferumeruticket 国立新美術館の「フェルメール『牛乳を注ぐ女』とオランダ風俗画展」を見ました(11月23日)。オランダが世界に君臨した1600年ごろから、その後1900年にかけての100点余が見応えのある展示となっていました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 圧巻は、なんといってもヨハネス・フェルメールの「牛乳を注ぐ女」でした。朝はやく入館したこともあり、比較的じっくりとその本物の前で、鑑賞することができました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Milkmaid2 「飾り気のない部屋の一隅で、素朴な顔つきの若い女の使用人が、粗い陶器製の壷から、テーブルに置かれた広口の容器に牛乳を注いでいる。女は、まっすぐに腰を伸ばして立ち、頭部をやや左方に傾け、右手で壷の取っ手を持ち、左手で下部を支えながら、注意深く壷を傾けて、注がれる牛乳の量を調整している。画面左側の窓からは柔かい光が差し込んでいて、白い頭巾を被り、黄色の胴着、青いエプロン、赤いスカートを身につけた女の姿を、白い漆喰の壁を背景に浮かび上がらせている」……イヤホンガイドを何度か繰り返し聞きながら、絵と対面しました。1658年~1659年。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                「牛乳を注ぐ女」を頂点として、展覧会は17世紀の家庭の主婦と使用人を中心に、オランダの風俗画が続きました。壁一杯の大作があるわけではなく、いずれもコンパクトな、普通の家庭の壁にでも気軽に掛けられそうな、コンパクトな作品ばかりですが、そのひとつひとつに当時のオランダの暮らし、商人と家庭人のやりとり、あちこちでの人々の集まりの様子などが描かれていました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Kojiinnonnna  もうひとつ記憶に残った作品。ニコラース・ファン・デル・ヴァーイという人の「アムステルダムの孤児院の少女」をあげておきます。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                「アムステルダム私立孤児院の一人の少女が、窓辺に立って本を読んでいる。少女は画面の中央に配され、ほとんど全身が、やや下方から見上げて描かれている。このために、また逆光が彼女の横顔を照らし出していることもあって、少女の様子は、フェルメールの<牛乳を注ぐ女>に似た、ある種のモニュメンタリティを示している。さらに、光の戯れと人物の夢中になっている様子のおかげで、二つの作品は、同じ黙想にふけるような雰囲気をかもしだしている。しかしながら、フェルメールと比較すると、ファン・デル・ヴァーイは、説得力のある質感表現や細部の細かな描出よりもむしろ、作品によって生み出される全体の印象の方に、関心を寄せている」。1900年頃。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                      ……… …………

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 12月17日までで、たぶん大勢の人たちで混雑すると思いますが、早い時間ならそれなりに落ち着いた鑑賞が出来ると思います。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                | | コメント (2) | トラックバック (0)

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                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                夏目漱石と新宿の文学者たち

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Sosekisinnjuku  新宿歴史博物館(四ツ谷)で開かれている「夏目漱石と新宿の文学者たち」の企画展を見てきました(11月8日)。漱石は新宿区喜久井町に生まれ、早稲田南町で亡くなっていて、今年生誕140年にちなんでの企画展でした。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 先日見た江戸東京博物館(両国)の特別展(10/17付け掲載)が、漱石の一生涯を通じた展示であったのに比べ、コンパクトでしたが、新宿区が主な舞台となった『道草』に関する資料や、多くの作品を執筆し、小宮豊隆や森田草平、のちに芥川龍之介などが出入りした「漱石山房」など、新宿にちなんだ数々の展示で、見ごたえがありました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 新宿は漱石のふるさと、創作・生活の場で、生家の近くに「夏目坂」の地名があったり、御苑近くの「太宗寺」の境内の地蔵の上で、『道草』の健三が遊んだり、また、『三四郎』の野々宮は大久保停車場近くに住んでいました。『硝子戸の中』では、漱石が幼いとき、四ツ谷の夜店で小さいザルに入れられていたし、今回の会場の「新宿歴史博物館」のある「津の守坂」は『道草』で健三の姉が住み、『それから』の中にも出ていました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 私事ながら、私も新宿区に10年ほど、すぐとなりの東中野に6年ほど住んで、職場があり、生活したことから、展示物には、時代の違いはありましたが、ある種の親近感を覚えました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Sosekisannbo

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 「漱石山房」の模型が展示され、「紫壇文机」「万年筆」「竹腕枕」「煙草入れ」などの遺愛品や、岡本一平の絵に見られるような多くの弟子たちとの交流の様子から、動画のように、当時の漱石の日々を想像できました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Sousekidaruma   漱石が執筆の合間によくした書画、特に水彩画・水墨画・油絵の展示が充実していました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 写真はそのうちの「達磨渡江図」ですが、これは、夏目房之介著「漱石の孫」の中で、『昔、池上(鏡子夫人が漱石没後に住んだ)の家にかかっていた。達磨が舟に乗って川を下っている絵だが、子ども心に何だか暗くて不気味な絵に見えた。漱石は書はうまいが、絵はヘタなので、絵の具を塗り重ねてしまい、彩度が落ちてしまった』との主旨のことを書いていました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 うまいヘタはともかく、50歳という短い人生の中で、数々の小説をはじめ、あれだけの業績の合間に、よくも、書といい、絵といい、実に多才だったなあと感嘆しました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 昭和28年に「猫塚」が、復旧完成し、その記念式典のビデオが、今回公開されていました。鏡子夫人、長男の純一氏の顔、来賓に小宮豊隆、安倍能成のスピーチの様子がモノクロ画面に、和やかに映っていました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 漱石以外の新宿ゆかりの文学者の展示では、泉鏡花、島崎藤村、小泉八雲、坪内逍遥などが紹介されていました。その中で、林芙美子(今の新宿区中井に居住し、小説『放浪記』には新宿の街並の様子がよく登場する)に宛てた、三島由紀夫、船橋聖一、宇野千代などの書簡が印象的でした。それぞれの名だたる高名な文学者の肉筆は、しっかりして、きれいで、流れるような筆跡で、今も生きているように思えました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                    ~~~~ ~~~~ ~~~~

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                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                | | コメント (0) | トラックバック (1)

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                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                遠野の民話……岩手路 3

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Minnwazasikiwarasi  遠野といえば民話。そのノスタルジックの世界は柳田国男の「遠野物語」で広く紹介され、現地には「遠野市立博物館」「佐々木喜善資料館」など、多くの施設があり、訪ねました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 今回の旅で見たいくつかの民話の世界を、10枚の写真に収めました。下記URLをクリックして、スライドショーでご覧下さい。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   http://www.geocities.jp/kijuro27/sub-minnwa.html

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 「遠野物語」から、それらの民話を抜粋してみます。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                <ザシキワラシ>

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                山口なる旧家にて山口孫左衛門といふ家には、童女の神二人いませりといふことを久しく伝へたりしが、ある年同じ村の何某といふ男、町より帰るとて留場の橋のほとりにて見馴れざる二人のよき娘に逢へり。物思はしき様子にてこちらへ来る。お前たちはどこから来たと聞けば、それの村の何某が家にと答ふ。その何某はやや離れたる村にて、今も立派に暮らせる豪農なり。さては孫左衛門が世も末だなと思ひしが、それより久しからずして、この家の主従二十幾人、茸の毒にあたりて一日のうちに死に絶え、七歳の女の子一人残せしが、その女もまた老いて子なく、近き頃病みて失せリ(遠野物語18)。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Minnwaosirasama2  <オシラサマ>

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                昔ある処に貧しき百姓あり。妻はなくて美しき娘あり。また一匹の馬を養ふ。娘この馬を愛して夜になれば厩舎に行きて寝ね、つひに馬と夫婦になれリ。ある夜父はこの事を知りて、その次の日に娘には知らせず、馬を連れ出して桑の木につり下げて殺したり。その夜娘は馬のをらぬより父に尋ねてこの事を知り、驚き悲しみて桑の木の下に行き、死したる馬の首に縋りて泣きゐたりしを、父はこれをにくみて斧をもちて後より馬の首を切り落とせしに、たちまち娘はその首に乗りたるまま天に昇り去れり。オシラサマといふはこの時よりなりたる神なり(同69)。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                <雨風祭>

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Minwa210ka 盆の頃には雨風祭とて藁にて人よりも大なる人形を作り、道の岐に送り行きて立つ。紙にて顔を描き、瓜にて陰陽の形を作り添へなどす。虫祭の藁人形にはかかることはなくその形も小さし。雨風祭の折は一部落の中にて頭屋を択び定め、里人集まりて酒を飲みて後、一同笛太鼓にてこれを道の辻まで送り行くなり。笛の中には桐の木にて作りたるホラなどあり。これを高く吹く。さてその折の歌は「二百十日の雨風まつるよ、どちの方さ祭る、北の方さ祭る」といふ(同109)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 

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                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                特別展 「文豪・夏目漱石」

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 江戸東京博物館で開かれている特別展「文豪夏目漱石ーそのこころとまなざし」を見学しました。漱石の生い立ちから、松山・熊本そしてロンドンでの異文化体験、文学にとどまらず美術や落語、漢詩・俳句など漱石の幅広い趣味の世界、そして、文豪の生きた明治という時代、当時の東京の様子など、多岐にわたる展示でした。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 午前中約3時間、800点といわれる展示品をたっぷり見て廻りました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Sousekitenn

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  左は展覧会のチラシ。漱石の書いたロンドン地図、イギリスから持ち帰った蔵書、「猫」のジャケット、デスマスクの型、水彩画、「こころ」の装丁原画、岡本一平が書いた漱石八態の絵……と実にいろいろの、これまで書物でも見なかった展示物がならんでいました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 この他にも、鏡子夫人との新郎・新婦(候補)の見合い写真、子規との直筆の往復書簡、寺田寅彦が預けたというオルガン、朝日新聞社入社の際の契約書、修善寺の大患時の「シュゼンジキクヤセンセイキトク」の鈴木三重吉あてのウナ電などなど、漱石にまつわるエピソードの証拠品が、次から次へと目に入りました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 興味深かったのは、展示の作品草稿や上に揚げたような品々が、おおよそすべて、漱石自身の作品や随筆、日記、講演録で、漱石自身の卓抜な文章で、目にした記憶があったこと。そうしたある種鮮明な既視感が、いま眼のあたりにひろがって、漱石その人……20代の漱石、病気で苦しんだ漱石、必死で文学と取り組んだ漱石、子どもたちに優しかった漱石、子規をはじめ友人を大切にした漱石、博士を辞退して官を嫌った漱石などなどのいろんなシーンが、生き返って語りかけてくる感じでした。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 出口近くのデスマスク、死の直前の写真(死にそうな人も写真に撮ると治る、という風聞があり、子どもにせがまれて鏡子夫人が、新聞社の人に撮影させた)の展示で、漱石49歳の終焉となりましたが、「漱石」を外見は云うに及ばずその内面の一端まで体感できた展覧会でした。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 ところで、漱石は、子規や大塚楠緒子の死を悼んで、次のような有名な句を詠んでいますが、漱石の死を悼んだ句、たとえば虚子や、芥川龍之介などの句を、未だ不勉強で、目にしていません。偉大な文豪の死、この展覧会でも「漱石山房」に、大勢の弟子達や関係者が集まる絵が出品されていましたが、たぶん、いくつかは追悼句があると思われるので、いずれ、探ってみたいと思いました。それとも、漱石が偉大すぎ、新聞小説(明暗)執筆の最中の、あまりに若い突然の師匠の訃報に、弟子達は追悼句どころではなかったのでしょうか。漱石の一生と死を、じんわりと感じて、展覧会をあとにしました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  手向くべき線香もなくて暮れの秋

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  有る程の菊抛げ入れよ棺の中

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 11月18日まで。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                | | コメント (0) | トラックバック (0)

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                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                芭蕉入門(井本農一) その1

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Bashonyuumonn  講談社学術文庫の「芭蕉入門」(1977年刊)をあらためて。読んでみました。著者の井本農一氏は芭蕉研究の第一人といわれています(1913~1988)。この本は昭和50年にNHKで24回にわたって放送したものを草稿にしたものです。復習も兼ねて、何回かに分けて、blogに書いてみます。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 その1は、芭蕉が生涯どのような旅をしているのかを、年譜に沿って整理してみます。表示はすべて陰暦。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                ………… ……………

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 1644年 伊賀上野(or柘植)にて誕生
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 29歳まで:正確な記録はないが、伊賀上野にいた。20代になって、時折京都の北村季吟を訪ねたらしい。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 29歳の春:江戸へ
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 33歳:一度伊賀上野に帰省している。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 34歳:江戸小石川の水道工事関係の事務に従事
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 37歳:日本橋から深川の草庵に退隠、俳風が大転換
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 38歳:深川の草庵を「芭蕉庵」と号する。「雪の朝独り干鮭(からざけ)を噛み得タリ」
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 39歳:12月の江戸の大火で類焼し、甲斐の国都留に流寓。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 40歳:5月に江戸に戻る。冬に芭蕉庵を新築。「春立つや新年ふるき米五升」
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 41歳:8月から「野ざらし紀行」の旅。伊賀上野・大和・吉野・山城・大垣・熱田・名古屋、故郷で越年。「野ざらしを心に風のしむ身かな」
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 42歳:奈良・京都を経て大津に滞在。名古屋・木曾路・甲州路を経て4月末に江戸に戻る。ここまでが「野ざらし紀行」。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 44歳:8月鹿島詣で、「鹿島紀行」の旅。10月から帰郷の旅へ、のちの「笈の小文」の旅。上野で越年。「旅人と我が名よばれん初しぐれ」
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 45歳:2月伊勢神宮参拝。3月吉野の花見。高野山・和歌浦・奈良・大坂・須磨・明石を巡遊し、4月に京都へ。ここまでが「笈の小文」。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 45歳:6月大津・尾張・名古屋・熱田・鳴海、
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 45歳:8月信濃国更科姨捨山へ 「更科紀行」の旅 碓氷峠を越えて江戸へ。「吹きとばす石はあさまの野分かな」
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 46歳(1689年):3月27日奥羽北陸巡行の旅(「おくのほそ道」の旅へ出発。「行く春や鳥啼き魚野の目は泪」日光・白河・仙台・松島・平泉「夏草や兵どもが夢の跡」・酒田・象潟・金沢・福井・敦賀、8月20日過ぎに大垣へ。「蛤のふたみにわかれ行く秋ぞ」
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 46歳:11月末奈良を経て、京都・大津、膳所で越年
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 47歳:1月上野へ戻る。伊勢参宮などへ。「初しぐれ猿も小蓑をほしげなり」
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 47歳:4月~7月幻住庵、その後義仲寺無名庵。「行く春を近江の人とおしみける」。9月上野。京都・湖南を経て大津で越年。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 48歳:1月上野。4月京都落柿舎(嵯峨日記)。5月京都凡兆宅(猿蓑の編集)。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 48歳:8月義仲寺、堅田。9月江戸へ、彦根・垂井・大垣・名古屋・熱田・新城、10月江戸に帰着。日本橋の借家で越年。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 49歳:5月新築の芭蕉庵に移る。「名月や門(かど)にさしくる潮頭(しおがしら)」。51歳5月まで。「おくの細道」の推敲執筆など。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 51歳:5月伊賀上野。7月大津・京都落柿舎、一旦帰郷の後9月大坂。発病。「秋深き隣は何をする人ぞ」
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 51歳(1694年):10月12日死去。旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                ………… ……………

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 このように整理してみると、 29歳に江戸に出てきたあとは、故郷伊賀上野との往き来を含めて、江戸・名古屋・京都・大坂の日本のメインル-トだけでなく、吉野、木曾路、信濃路、奥州、北陸、等の当時、人跡まばらな地方へも意識的に足を向けたことが実感されます。交通手段は徒歩以外になく、宿泊等の利便手段も乏しい時代の行動として、生涯を旅に貫徹した体力・意志力は、驚異的です。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                | | コメント (0) | トラックバック (0)

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                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                しぐれと芭蕉の旅

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 季節外れの話題ですが、参加している「芭蕉を読む会」で、いま「笈の小文」を講読しています。その旅立ちにあたって

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  旅人と我が名よばれん初しぐれ

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                の句があります。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 「笈の小文」の旅の出立句で、これからの旅先への勇んだ気持ちと、しぐれにかけたわびしい思いを読んでいます。……これから旅に出ると「旅のお人」と呼ばれる身の上になるが、初しぐれの季節に、風流な初しぐれに濡れながら、そのように「旅人」と呼ばれるのは、今の気持ちにふさわしく、本懐である………。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 芭蕉は、この他にもいろいろな場面で「しぐれ」を読んでいるそうです。勉強会で紹介のあった、芭蕉のしぐれの句を、書いてみます。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  いづく霽(しぐれ)傘を手にさげ帰る宿

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 芭蕉37歳、俳諧宗匠を止め、深川に移った頃の句。どこかで時雨れが降ったのだろうか、濡れた傘を手にさげて帰って行く僧がある。「僧寺ニ帰ル」という漢詩の題材を取り入れて、時雨を読んだもの。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  草枕犬も時雨るよるのこゑ

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  一尾根はしぐるる雲か富士の雪

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                • 「笈の小文」の旅で10月25日に江戸を発っての途中吟。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                    初しぐれ猿も小蓑のほしげなり

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  • 「奥の細道」の旅が終わり伊勢から伊賀上野へ戻る山中での句。山越えの途中ではらはらと初時雨が降ってきた。折りしも風雅なことよと思い、すぐ止むだろうと、木かげに雨宿りをしていると、近くの木に猿がいて時雨を見ている。人間もだが、猿も、猿なりの小さい蓑を着て、初時雨の中を歩いてみたそうな様子である……

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                    人々をしぐれよ宿は寒くとも

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                    初時雨初の字を我が時雨かな

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  • 「一尾根は…」の句は、雄大な富士にかかる雪雲の動きを捉えた情景が目に浮かびますし、「犬も時雨る…」の句は冷えびえとした初頭の旅枕のわびしさが伝わってきます。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                   ………… …………

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  Nozarasimap1  ところで、芭蕉は生涯に有名な「おくの細道」の旅など、5つの旅の紀行を残しています。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  • 野ざらし紀行:41歳の8月から翌年4月下旬まで。江戸・伊賀・吉野・名古屋・伊賀・奈良・名古屋・木曽路・江戸。
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  • 鹿島紀行:44歳の8月の約10日間。江戸・行徳・布佐・利根川下り・鹿島・潮来・江戸
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  • 笈の小文:44歳の10月から翌年4月まで。江戸・鳴海・伊良古崎・伊賀・吉野・和歌の浦・高野山・須磨・明石
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  • 更科紀行:45歳の8月。名古屋・木曽路・更科・江戸

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  Nozarasimap2_1 おくの細道:46歳の3月から8月下旬まで。江戸・日光・白河・福島・仙台・松島・平泉・尿前・尾去沢・山寺・最上川・羽黒山・象潟・酒田・市振・金沢・福井・敦賀・大垣

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                    3年前の野ざらし紀行の出立にあたって「野ざらしをこころに風のしむ身哉」と、自分は野ざらし=骸骨になろうともと、決死のイメージを読んだ心境に比べれば、「笈の小文」は余裕に満ちています。江戸を立つ時もにぎやかに送られましたが、道中でも至るところで大歓迎だったようです。このころ、芭蕉は既に名士になり、地方の人々は芭蕉の来るのを待ちかねていたと言われています。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                | | コメント (0) | トラックバック (0)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                2006年10月13日 (金)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                夜明けの空

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Yoake0610121  秋晴れが続いていますが、きのうの朝、すこし早くに目がさめ、カーテンを開けたところ、ご覧のような夜明けの空に出会いました。眠気まなこながら、カメラを向けたのが、この写真です。先日紹介した「秋の空」といい、この「黎明」の色といい、自然は折々に、かくも鮮やかな色彩を見せてくれるものだと、あらためて感じます。<撮影10月12日午前5:35>.

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Yoake0610122  有明 とか、あかつき という語は、俳句の世界を飛び越して、和歌の世界を思い出します。それも、次のような後朝(きぬぎぬ)の別れにつながっていて、身近な自然の色彩の賛美が、一転して、古今集や後拾遺集の艶な世界になってしまいます。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 有明のつれなく見えし別れより 暁ばかり憂きものはなし    壬生忠岑

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 明けぬれば暮るるものとは知りながら なほうらめしき朝ぼらけかな    藤原道信朝臣

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 先の方の歌は百人一首第30番で「有明の月が夜の明けるのも知らぬ顔でいるとき、無情な女と別れたが、それ以来あかつきぐらいつらいものはなくなった」ーー

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 あとの歌は同じく第52番で「夜が明けると、やがては日が暮れる(そしてあなたに逢える)、とは知っていながらも、やはり恨めしい(後朝の別れの)朝ぼらけであることよ」--

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                 寝起きの色彩の感動が、一挙にタイムスリップして、人間の営みの話に変わりました。ついでに、後朝(きぬぎぬ)をしらべてみると、『男女が供寝をした翌朝、それぞれの衣(きぬ)を着て別れることから、男女が供寝をしたあくる朝のことをいう』とありました。<井上宗雄著 百人一首を楽しく読む 笠間書院より>

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                | | コメント (0) | トラックバック (1)

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                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                スイス旅行の俳句

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                これまでスイス紀行で、俳句をそのときどき紹介させていただきましたが、一まとめにしてみました。多くは「報告句」の域を出ませんが、ともかくも、五七五にはめこむだけでも、その時の記憶になるのではと思って詠んでいました。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                スイス旅行にて(06,7,13~7,23)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                (成田)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                多国語や出発ターミナル夏休み

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                (機内)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                満席の眠り空ゆく夏の星

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                (ブリュエラ峠)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                雪渓や光る山頂(いただき)落ちて峪

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Buryueratouge_1

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                (サンモリッツ)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                迫り来て重なる青嶺スイスかな

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                (グリンデルワルド)
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                日本語の注釈もある夏料理

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                水までもフラン頼みか日の盛り

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                (アイガー)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                虎尾草のゆれてアイガーそそり立つ

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                アイガーの北壁真下お花畠

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Toranoo_1

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                北壁のハンググライダー雲の峰

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                (ロートホルン)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                夏の山来た道同じ四十年

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                (ユングフラウヨッホ~クライネシャイデック)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                --新田次郎の碑の前でーー
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                夏高嶺先人たちの跡仰ぐ

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                カウベルのこだまとなりて大夏野

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Cowbell2_1

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                絶壁のトンネル抜けて夏の雲

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                その一瞬夏野の石に転びけり

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                (マッターホルン)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Mattahorunngoraiko_1

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                東壁の冷気突き刺しご来光

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                一万尺続く花畠登山みち

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                四千メートル歩く山嶺大夏野

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                (ローヌ氷河)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                万年のあをき滴り氷河かな

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Ronuhyouga_1

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                (後ライン河)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                夏川や氷河のとけてはし浸る

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Hyougatokkyuu3_1

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                (エギュール・デ・ミディ展望台、グランド・ジョラス、モン・ブラン)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                雲海のたちまち来り針の峰

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                雪渓に黒い一列動き出す

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Egiyuseiretucu_1

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                (ツエルマット)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                若者や街賑わえる白夜かな

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                人よ灯よ山間の街まだ百夜

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                演奏も屋台もならぶ白夜かな

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                乙女らは片肌脱いで山の街

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Zermattnight_1

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                (モントルー、レマン湖)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                Remannkoonnpu_1

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                レマン湖はジャズ祭のあと静まれり

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                夏の湖ハンググライダー岸かなた

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                夕立の激し短し湖畔みち

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                (帰国の機内)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                日本は出水のニュース帰国便

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                (ふたたび成田)

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                大荷物成田は真昼大暑かな 

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                | | コメント (0) | トラックバック (0)